司法書士
吉原有規
司法書士吉原合同事務所代表。
モットーは「納得できる相続を増やす」こと。相続専門の司法書士として、誰に相談したらよいかわからない悩みを丁寧にお聞きし、一緒にベストな解決策を考えることで、「納得の相続」を増やしていくことを目指している。
趣味は旅行とグルメ。自分の直感で選ぶと大体失敗することから、旅の前には情報を徹底的に調べ、実際に行った人の声や情報を参考にしながら評価が高いところを巡っている。
[生前対策]
遺言書を作成する際に注意したい遺留分について、司法書士が解説します。「全財産を長男に相続させたい」「特定の相続人に多く残したい」という場合でも、後から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。遺留分の基本、兄弟姉妹に遺留分がないこと、不動産を相続させる場合の支払い原資の準備、生命保険の活用まで分かりやすく整理します。
目次
「全財産を長男に相続させたい」「特定の子には財産を渡したくない」「お世話になった人に多く残したい」——遺言書を作るとき、このような希望を持つ方は少なくありません。
遺言書を作れば、原則として自分の望む形で財産を分けることができます。しかし、ここで見落としやすいのが「遺留分」です。
遺言は自由に書くことができますが、遺留分を無視した内容にすると、後から特定の相続人に金銭の請求が生じることがあります。特に、不動産を特定の相続人に集中させる場合は、生命保険などで支払いの原資まで設計しておくことが重要です。
遺言・遺留分・支払い原資の確保はセットで考える——これが、相続トラブルをできる限り防ぐ遺言書を作るうえでの大切な視点です。
このコラムでは、遺言書を作成する際に、遺留分についてどんな点に注意すべきかを、司法書士の視点から解説します。
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された、最低限の取り分のことです。
被相続人は、遺言によって自分の財産を自由に分けることができます。しかし、残された家族の生活保障などの観点から、一定の相続人には、遺言によっても奪うことのできない最低限の取り分が認められています。これが遺留分です。
ここで重要なのは、遺留分を侵害する遺言を作っても、その遺言が無効になるわけではないという点です。遺言は有効なものとして、いったんはその内容どおりに財産が承継されます。
ただし、遺留分を侵害された相続人は、多く財産を受け取った人に対して、侵害された金額の支払いを請求することができます。これを「遺留分侵害額請求」といいます。
つまり、遺留分を無視した遺言は、「遺言は通るが、後から金銭の請求を受ける可能性がある」という不安定な状態を生みます。
遺留分は、すべての相続人にあるわけではありません。相続人の範囲によって、次のように定められています。
| 相続人の関係 | 遺留分の有無 |
|---|---|
| 配偶者(妻や夫) | あり |
| 子(およびその代襲相続人) | あり |
| 直系尊属(父母・祖父母など) | あり |
| 兄弟姉妹(およびその代襲相続人である甥・姪) | なし |

最大のポイントは、兄弟姉妹には遺留分がないという点です。
これは遺言を作るうえで非常に重要な意味を持ちます。たとえば、子どもがおらず、相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹になるケースでは、「全財産を配偶者に相続させる」という遺言を作っておけば、兄弟姉妹には遺留分がないため、兄弟姉妹からの遺留分侵害額請求を受けることはありません。
子どもがいない夫婦で、配偶者にすべての財産を残したい場合には、遺言書の作成が特に有効です。遺言がなければ、配偶者と兄弟姉妹で遺産分割協議をする必要が生じ、配偶者が困ることがあります。
遺留分の全体の割合は、原則として次のとおりです。
この全体の遺留分を、各相続人が法定相続分に応じて分け合います。
簡単な例で見てみます。
例:父が亡くなり、相続人が長男・次男の2人。遺産が4,000万円。
この場合、全体の遺留分は遺産の2分の1なので2,000万円。これを2人で分けるので、長男・次男それぞれの遺留分は1,000万円ずつです。
仮に「全財産4,000万円を長男に相続させる」という遺言を作った場合、次男は遺留分1,000万円を侵害されているため、長男に対して1,000万円の支払いを請求できる、ということになります。
なお、実際の遺留分の計算では、生前贈与や債務などを考慮する場合があります。ここでは、基本的な考え方を分かりやすくするため、単純化した例で説明しています。遺言を作る際には、「この相続人には、最低限これくらいを請求される可能性がある」という遺留分の額をイメージしておくことが大切です。
遺留分を侵害する遺言を作っても、遺言自体は有効です。しかし、次のような問題が生じることがあります。
① 遺留分侵害額請求を受ける
財産を多く受け取った相続人は、遺留分を侵害された相続人から金銭の支払いを請求される可能性があります。せっかく「長男に全部」と遺言で決めても、結局、長男が次男に金銭を支払うことになれば、争いの火種を残すことになります。
② 不動産を集中させた場合に支払い資金が不足する
特に注意が必要なのが、不動産を特定の相続人に集中させるケースです。
2019年(令和元年)施行の改正により、遺留分の請求は金銭請求に一本化されました。以前は不動産そのものの持分を渡す形(遺留分減殺請求)でしたが、現在は金銭で支払うことになります。
そのため、たとえば「自宅(不動産)をすべて長男に」という遺言を作った場合、長男は不動産を取得できても、次男から遺留分侵害額請求を受けると、自分の手元資金から金銭を支払わなければなりません。手元に十分な現金がないと、せっかく相続した不動産を売却して支払うことになりかねません。
③ かえって相続人間の関係が悪化する
遺留分を無視した遺言は、特定の相続人に「自分は不当に扱われた」という不満を残し、相続人間の関係を悪化させることがあります。
遺言を作る際に、遺留分でのトラブルを避けるためには、次のような点に配慮するとよいでしょう。
まず、誰にどれだけの遺留分があるかを把握し、それを踏まえて配分を考えます。遺留分を侵害しない範囲で配分できれば、遺留分侵害額請求のリスクはなくなります。
どうしても特定の相続人に多く残したい、あるいは特定の相続人には渡したくないという場合、遺留分を侵害する内容になることがあります。
その場合でも、遺言の「付言事項」として、なぜそのような配分にしたのか、その理由や家族への思いを書き添えておくとよいでしょう。付言事項には遺留分侵害額請求を防ぐ法的な効力はありませんが、相続人に遺言者の考えを伝え、感情的な対立を和らげる材料になることがあります。
遺留分侵害額請求は金銭で支払うことになります。そのため、不動産を特定の相続人に集中させる場合は、その相続人が遺留分相当額を支払えるよう、金銭(現預金)も併せて相続させておくなどの配慮が有効です。

不動産を特定の相続人に相続させる場合の遺留分対策として、生命保険の活用が有効なことがあります。
生命保険金は、原則として受取人固有の財産であり、遺産分割の対象となる相続財産には含まれません。そのため、特定の相続人に確実に資金を残す手段として活用されることがあります。
遺言で不動産を特定の相続人に相続させる場合、その相続人が後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。このような場合に備えて、その相続人を受取人とする生命保険を準備しておくことで、遺留分侵害額の支払い原資を確保しやすくなります。実務では、想定される遺留分額から必要な保険金額を逆算しておくと、過不足のない準備がしやすくなります。これにより、不動産を取得する相続人が、不動産を売却せずに遺留分の支払いに対応できる可能性が高まります。
ただし、注意点があります。生命保険金の額が遺産全体と比べて著しく大きい場合などには、相続人間の公平との関係で、特別受益に準じて持戻しの対象とされる可能性があります(最高裁判例の考え方)。生命保険を使えば遺留分を完全に回避できる、というものではありません。
保険の「名義」に気をつけましょう
遺留分対策として生命保険を活用する場合、契約者・被保険者・受取人を誰にするかによって、かかる税金の種類(相続税・贈与税・所得税)が変わります。たとえば、契約者と被保険者が同じで受取人が相続人であれば相続税の対象になりますが、契約者・被保険者・受取人がすべて異なると贈与税の対象になるなど、組み合わせによって扱いが変わります。必ず事前に専門家へ確認のうえ、正しい名義で契約することが大切です。
なお、生命保険金には、相続税の計算上の非課税枠(500万円×法定相続人の数)があるなど、税務上の論点も関わってきます。保険を使った相続対策・税務上の取扱いについては、税理士にも確認しながら進めることをおすすめします。
遺言書の作成は、司法書士がサポートできる業務です。当事務所では、次のような対応ができます。
遺言書は、文言次第で実現できる内容が大きく変わります。特に不動産を含む場合は、その後の登記まで見据えた設計が重要です。
一方で、実際に相続が起き、相続人間で遺留分をめぐる争いが生じた場合に、一方の相続人の代理人として遺留分侵害額を請求したり、その金額について交渉したりすることは、司法書士にはできません。このような争いの解決は弁護士の領域になります。
この記事でお伝えしたいのは、争いが起きてから対応するのではなく、遺言書を作る段階で遺留分に配慮しておくことで、そもそも争いを防ぐという考え方です。
「特定の子に多く残したい」「子どもがいないので配偶者にすべて残したい」「でも、後でもめないか心配」という段階からご相談いただけます。遺言書は、内容だけでなく支払い原資の設計まで含めて考えないと、かえってトラブルの原因になることがあります。当事務所では、遺留分を踏まえた配分の整理から、生命保険の活用を含めた設計、遺言書の作成までサポートします。
相続が起きてからではできない対策もあります。元気なうちに整理しておくことで、選択肢が広がります。
吉原合同事務所では、千葉市を拠点に、遺言書作成のサポートに対応しています。
無効にはなりません。遺言自体は有効で、いったんはその内容どおりに財産が承継されます。ただし、遺留分を侵害された相続人から、侵害額に相当する金銭の支払いを請求される可能性があります。
兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、「全財産を配偶者に相続させる」といった遺言書を作っておけば、兄弟姉妹から遺留分侵害額請求を受けることはありません。子どもがいない夫婦で配偶者にすべて残したい場合には、遺言書の作成が特に有効です。
遺言の付言事項として、そのような配分にした理由や家族への思いを書き添えておくと、相続人の感情的な対立を和らげる効果が期待できます。また、不動産を特定の相続人に集中させる場合は、遺留分の支払いに使える金銭を併せて相続させたり、生命保険を活用したりすることで、支払い資金を確保しておくことが有効です。
生命保険は、遺留分侵害額請求を受けた場合の支払い原資を準備する手段として活用できることがあります。生命保険金は、原則として受取人固有の財産であり、遺産分割の対象にはなりません。ただし、保険金額が遺産全体と比べて著しく大きい場合などは、相続人間の公平との関係で問題になることがあります。また、相続税や保険契約の名義設計も関わるため、税理士にも確認しながら進めることをおすすめします。
相続人に遺留分を放棄してもらう方法はあります。被相続人の生前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です(相続開始後であれば、放棄は本人の意思表示で可能です)。ただし、生前の遺留分放棄を検討する場合は、本人の意思確認や家庭裁判所の手続きが関係するため、弁護士への相談も含めて慎重に進める必要があります。
すでに相続人間で遺留分をめぐる争いが起きている場合、一方の相続人の代理人として請求や交渉を行うことは、司法書士にはできません。このような場合は弁護士の領域になります。当事務所では、争いが起きる前の遺言書作成のサポートを通じて、トラブルを未然に防ぐお手伝いをしています。
遺言書を作れば、原則として自分の望む形で財産を分けることができます。しかし、遺留分を無視した遺言は、遺言自体は有効でも、遺留分侵害額請求という形で後から相続人間の争いを招くことがあります。
特に、不動産を特定の相続人に集中させる場合は、遺留分の支払いが金銭でなされるため、支払い資金の確保まで考えておく必要があります。
遺言作成の段階で、各相続人の遺留分を把握し、付言事項での説明、支払い資金の確保、生命保険の活用などを検討しておくことで、争いを未然に防ぎやすくなります。遺言・遺留分・支払い原資の確保はセットで考えることが大切です。
なお、すでに遺留分をめぐる争いが起きている場合は弁護士の領域となります。遺言書の作成や、相続税が関わる相続対策については、当事務所でサポートできますので、お気軽にご相談ください。
遺言書は「書けば安心」ではなく、「どう設計するか」で結果が大きく変わります。遺留分に配慮した遺言書を作ることは、将来の相続争いを防ぐうえで大きな意味があります。
当事務所では、遺留分を踏まえた財産配分の整理から、遺言書の作成、遺言内容を実現するための相続登記まで一括してサポートします。相続税や生命保険が関わる場合は、必要に応じて税理士と連携しながら対応します。
千葉市を拠点に、千葉市内および周辺地域のご相談に対応しています。お気軽にご相談ください。
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