司法書士
吉原有規
司法書士吉原合同事務所代表。
モットーは「納得できる相続を増やす」こと。相続専門の司法書士として、誰に相談したらよいかわからない悩みを丁寧にお聞きし、一緒にベストな解決策を考えることで、「納得の相続」を増やしていくことを目指している。
趣味は旅行とグルメ。自分の直感で選ぶと大体失敗することから、旅の前には情報を徹底的に調べ、実際に行った人の声や情報を参考にしながら評価が高いところを巡っている。
[相続発生後の手続き]
相続人の一部が生前に住宅購入資金や事業資金などの援助を受けていた場合、その援助が「特別受益」として遺産分割で問題になることがあります。本記事では、特別受益の基本的な考え方、持戻し計算の仕組み、生前贈与との違い、相続開始から10年経過後の注意点、司法書士が対応できる範囲についてわかりやすく解説します。
目次
相続が始まると、「長男だけ家を建てるときに親から援助を受けていた」「一部の相続人だけ生前に財産をもらっていた」といった話が出ることがあります。
このような生前贈与や援助は、遺産分割の際に「特別受益」として問題になることがあります。
ただし、特別受益にあたるかどうか、いくらとして考慮するかは、相続人間で意見が分かれやすい論点です。そのため、相続人全員で合意できる場合は、その内容をもとに遺産分割協議書を作成できますが、意見が対立する場合には弁護士への相談が必要になることがあります。
このコラムでは、特別受益という制度の概要と、生前贈与・援助がある相続で手続きを進める際の注意点を整理します。
特別受益とは、相続人の一部が、被相続人から生前贈与や遺贈などによって特別な利益を受けていた場合に、その利益を遺産分割で考慮する制度です。民法上は、遺贈、婚姻・養子縁組のための贈与、生計の資本としての贈与などが問題になります。
これらは、いわば「相続財産の前渡し」と見ることができます。特別受益がある場合、その分を相続財産に持ち戻して各相続人の取り分を計算することで、相続人間の公平を図るという考え方があります。これを「持戻し」といいます。
ただし、生前に受けた援助がすべて特別受益になるわけではありません。
特別受益にあたるかどうかは画一的に決まるものではなく、贈与の趣旨や金額、被相続人の資力、他の相続人との公平などを踏まえて判断されます。一般的な傾向は次のとおりです。
| 該当性 | 具体的な例 |
|---|---|
| あたりやすいもの | 住宅購入資金の援助、開業・事業資金、多額の持参金・支度金、不動産そのものの贈与 |
| 判断が分かれるもの | 高額な学費・教育費、生活費の援助(他のきょうだいとのバランスによる) |
| 原則あたらないもの | 扶養の範囲内の援助、少額の贈与、生命保険金(原則として受取人固有の財産) |
学費については、その家庭の経済状況からみて扶養の一環といえる範囲か、他のきょうだいと比べて特別に高額かなどによって判断が分かれます。きょうだい全員が同程度の教育を受けている場合は、特別受益にあたらないと考えられることが多いです。
生命保険金も、原則として受取人固有の財産であり、特別受益にはあたりません。ただし、保険金額が遺産全体と比べて著しく大きいなど、相続人間の公平を大きく害するような例外的な事情がある場合には、問題となることがあります。
このように、特別受益にあたるかどうかは個別の事情によります。「これは特別受益になるのか」という点は、まさに相続人間で意見が分かれやすい部分です。
特別受益は、相続人間の感情が絡みやすく、もめやすい論点です。たとえば、贈与の証拠が残っていない、金額や評価の時点について認識が食い違う、そもそも特別受益にあたるかどうかで意見が対立する、といった問題が起こります。
ここで重要な点があります。
【当事務所が対応できる範囲について】
特別受益の有無や金額について相続人間で意見が分かれる場合、当事務所では、一方の相続人の代理人として交渉したり、相手方に特別受益を認めるよう求めたりすることはできません。そのような場合は、弁護士への相談が必要になります。
一方で、相続人全員で分割内容について合意できている場合には、その合意内容に基づいて、遺産分割協議書の作成や相続登記を進めることができます。
特別受益を持ち戻す場合の取り分は、次のように計算します。
たとえば、父が亡くなり相続人が長男・次男の2人、相続開始時の遺産が4,000万円、長男が生前に住宅資金として1,000万円の援助を受けていたとします。
特別受益を持ち戻すと、みなし相続財産は4,000万円+1,000万円=5,000万円となり、各人の一応の取り分は2,500万円ずつ。長男は特別受益1,000万円を差し引いて1,500万円、次男は2,500万円、という分け方が考えられます。
ただし、これはあくまで考え方の一例です。実際の遺産分割では、相続人全員の合意が基礎になります。特別受益にあたるかどうかや金額に争いがある場合、当事務所が一方の相続人の代理人として計算を主張したり交渉したりすることはできません。
なお、これは遺産分割における取り分の計算であり、相続税の計算とは別のものです。
相続人全員で分割内容について合意できた場合、その合意内容を遺産分割協議書にまとめます。この遺産分割協議書は、不動産の相続登記をする際の登記原因証明情報として、登記手続きの基礎となる重要な書類です。
そのため、誰がどの財産を取得するのかを、協議書に正確に記載しておく必要があります。記載が不明確だと、相続登記が進められなかったり、後のトラブルにつながったりすることがあります。
当事務所では、相続人全員で合意された内容を、遺産分割協議書に正確に反映し、その後の相続登記まで一括して対応できます。
特定の相続人が不動産などを取得する代わりに、他の相続人に金銭を支払う「代償分割」という方法があります。生前贈与や援助の事情を踏まえ、相続人全員が合意した結果として、代償金の支払いを分割内容に含めることもあります。
相続人全員でこうした内容に合意している場合は、誰が何を取得し、誰が誰にいくらの代償金を支払うのかを、遺産分割協議書に明確に記載しておくことが重要です。記載が曖昧だと、後のトラブルや、相続税の課税価格の扱いの面で問題になることがあります(代償分割では、代償金を支払う側・受け取る側で相続税の課税価格が調整されます。詳細は税理士にご確認ください)。
特別受益を考慮した分割には、期間に関する重要なルールがあります。
現在の民法では、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として、特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分による分割が制限されます(令和5年4月1日施行)。
もっとも、相続人全員が合意している場合には、法定相続分と異なる内容で遺産分割協議を成立させること自体は可能です。そのため、古い生前贈与の事情をどのように扱うかは、最終的には相続人全員の合意内容によります。
相続人間で争いがある場合や、古い相続で特別受益を主張したい場合には、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
特別受益は、遺留分(相続人に最低限保障される取り分)の計算にも関係することがありますが、遺留分は特別受益とは別の論点です。遺留分の請求が問題になる場合は、弁護士にご相談ください。
相続人全員で分割内容について合意できている場合には、遺産分割協議書の作成や相続登記をサポートできます。一方で、特別受益の有無や金額について相続人間で争いがある場合には、弁護士への相談をご案内することがあります。
相続人間で合意ができている段階でのご相談が、最もスムーズに進みます。
ケースによります。きょうだい全員が同程度の教育を受けている場合や、その家庭の経済状況からみて扶養の範囲といえる場合は、特別受益にあたらないと考えられることが多いです。一方、特定の子だけが著しく高額な教育費を受けていた場合は、特別受益と判断されることがあります。判断が分かれる部分のため、争いがある場合は弁護士への相談が必要になることがあります。
生前贈与が古いものであっても、相続人全員が合意している場合には、その事情を踏まえて遺産分割協議をすることは可能です。ただし、相続開始から長期間が経過している場合、資料が残っていないため事実関係の確認が難しくなることがあります。また、現在の民法では、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分による分割が制限されます。そのため、古い相続で特別受益を主張したい場合には、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
生命保険金は、原則として受取人固有の財産であり、相続財産には含まれません。そのため、原則として特別受益にもあたりません。ただし、保険金額が遺産全体と比べて著しく大きいなど、相続人間の公平を大きく害するような例外的な事情がある場合には、問題となることがあります。
特別受益の有無や金額について相続人間で争いがある場合、当事務所が一方の相続人の代理人として交渉したり、相手方に特別受益を認めるよう求めたりすることはできません。このような場合は弁護士の領域になります。一方で、相続人全員で分割内容について合意できている場合は、その内容に基づいて遺産分割協議書の作成や相続登記を進めることができます。
特別受益は遺産分割における取り分の話であり、相続税の計算とは別の論点です。もっとも、代償金の支払いがある場合や、生前贈与がある場合には、相続税・贈与税の確認が必要になることがあります。税務判断は税理士の領域になりますので、相続税が関係する場合は税理士にご確認ください。
特別受益は、相続人の一部が生前にまとまった援助や贈与を受けていた場合に、遺産分割で問題となることがある論点です。
もっとも、実際に特別受益にあたるかどうか、いくらとして評価するかは、相続人間で意見が分かれやすい部分です。当事務所では、特別受益について一般的な制度説明を行うことはできますが、一方の相続人の代理人として特別受益を主張したり、相手方と交渉したりすることはできません。
相続人全員で分割内容について合意できている場合には、その内容に基づいて遺産分割協議書の作成や相続登記を進めることができます。意見の対立がある場合や、特別受益の有無・金額を争う必要がある場合、相続開始から10年を経過した古い相続で特別受益を主張したい場合には、弁護士への相談をご検討ください。
なお、相続税が関係する場合は税理士にご相談ください。
生前贈与や援助がある相続では、相続人間で分割内容をどのように整理するかが問題になることがあります。
相続人全員で分割内容について合意できている場合には、当事務所で遺産分割協議書の作成や相続登記をサポートできます。協議書の文言次第で登記や税務に影響が出ることがあるため、作成前のご相談をおすすめします。なお、特別受益の有無や金額について相続人間で争いがある場合は、弁護士への相談をご案内することがあります。
千葉市を拠点に、千葉市内および周辺地域のご相談に対応しています。お気軽にご相談ください。
ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問合せください。
専門スタッフが丁寧に対応いたします。
対応地域
千葉市を中心とした千葉県全域