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[生前対策]

分配に偏りがある遺言書、家族に言わなくてもいいですか?司法書士が実務の本音で解説

  • 投稿:2026年05月27日
分配に偏りがある遺言書、家族に言わなくてもいいですか?司法書士が実務の本音で解説

分配に偏りがある遺言書は、家族に知らせず作成することも法律上は可能です。ただし、相続後に「なぜ自分だけ少ないのか」「誰が作らせたのか」といった疑問や不信感が残ることがあります。付言事項や自筆の手紙の活用、生前に伝えることの大切さなど、司法書士が実務の視点から解説します。

こういうご相談が、実は多いです

遺言書の作成をご相談いただく際に、こうした状況でご来所される方がいます。

  • 同居して介護してくれた長男に、自宅と多くの財産を残したい
  • 生前にすでに援助した次女の分は、今回は少なくしたい
  • 事業を継いでくれた子に、会社関係の財産を集中させたい

内容としては、それぞれに自然な理由があります。ただ、もれなくこう続きます。

「でも、他の子には言いたくないんです。絶対揉めるから」

これは非常によくあるご相談です。このコラムでは、その問いに対して実務家の本音でお答えします。

法律上の答え:内緒のままでも作成できます

まず法律上の話をすると、遺言書は本人の意思能力と法律上の方式が揃っていれば有効です。家族の同意も、事前の通知も不要です。

分配に偏りがある内容でも、内緒のまま作成すること自体は可能です。

ただし、遺留分を侵害している場合には、相続開始後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。そのため、「内緒で作れるか」という問題と、「相続後に争いになりにくい内容か」という問題は、分けて考える必要があります。

「言わなければいけない」という義務はありません。

ただ、ここからが実務の話です。

「内緒のまま」は解決ではなく、先送りです

内緒にすれば生前は揉めません。それは本当です。でも揉めるタイミングが、死後にずれるだけです。

分配に偏りがある遺言書を家族に内緒にした場合、生前の衝突は避けられても死後に疑問や不信感が残ることを説明した図解

遺言書が開封されたとき、少ない分配を受けた相続人は初めてその事実を知ります。そのとき対話できる相手、つまり親はもういません。疑問をぶつける先も、理由を確認する手段も、ありません。

残るのは、「なぜ自分だけ少ないのか」という疑問と、「そんな遺言書をいつ、誰と作ったのか」という不信感だけです。

内緒にすることは、親にとっては楽な選択です。でも子どもたちに、解決の手段がない状態で感情だけを残すことになります。

付言事項で気持ちを伝えれば大丈夫?

「理由は遺言書の付言に書いておけばいい」というご相談もよくあります。付言事項は気持ちや理由を伝える手段として意味がありますが、ここには実務上の大きな落とし穴があります。

「書かせた」と思われやすい構造があります。

分配が多い子が親を連れてきて遺言書を作るケースは、実際によくあります。そうなると、付言に書かれた理由が「本当に親の言葉なのか」「多くもらう子が言わせたものではないのか」と疑われる余地が生まれます。

親の本心がどれだけ丁寧に書かれていても、遺言書を作った経緯への疑念があると、付言の言葉は届きにくくなります。むしろ、疑念を深める材料になることすらあります。

付言は、生前の説明を補うものです。生前の説明の代わりにはなりません。

遺言書の付言事項は本人の気持ちを補足するものだが、作成経緯への疑念がある場合は家族に届きにくいことを説明した図解

疑われるのは「内容」よりも「作った経緯」です

ここが、一般的なコラムではあまり語られない実務の核心です。

分け方に差がある遺言書で、相続後に本当に問題になるのは、遺言書の内容だけではありません。「誰がその遺言書作成を主導したのか」という経緯です。

たとえば、多く財産を受け取る予定の子が、専門家への相談予約を取り、親を事務所まで連れて行き、必要書類をすべて準備し、専門家との連絡も全部担当していたとします。

遺言書自体は有効でも、他の相続人から見ると、「あの子が全部段取りして書かせたのではないか」と見えてしまうことがあります。

相続後に問題になるのは、真実だけではありません。残された相続人からどう見えるか、です。

そのため、家族に言えない遺言書ほど、「本人が自分で考え、自分の意思で作った」とわかる形を残しておくことが大切です。

専門家との面談では、多く受け取る予定の相続人が同席しない時間を作る。本人の言葉で、なぜその分け方にしたいのかを確認する。財産の内容や家族関係について、本人自身から説明してもらう。こうした積み重ねが、後日の疑念を減らす材料になります。

では、どうすればいいのか

実務家として正直に言います。

できれば、生きているうちに、本人の口から伝えてほしいと思います。

「言えば揉めるかもしれない」、その通りです。親と特定の子どもとの関係が、一時的にギクシャクするかもしれません。

でも、こう考えてみてください。

「言う」ということは、親が嫌な思いを引き受けながら、子どもたちの将来の関係を守ろうとする行動です。対話がある分、誤解を解く余地もあります。「少なくとも本人から直接聞いた」という事実が、相続後の感情を和らげることがあります。

「言わない」という選択は、生前の衝突を避けられるという意味では、本人にとって負担の少ない選択かもしれません。でも、争いの火種を死後に先送りしているだけです。子どもたちは、もう話せない相手への疑問と不満を抱えたまま、きょうだい同士で向き合わなければなりません。

親と特定の子どもとの関係は、話すことで悪化するかもしれません。でも子どもたちの関係は、内緒にしたままよりずっとましになる可能性があります。

これは、親にできる最後の務めの一つだと思います。

もちろん、どうしても言えない事情があることも理解しています。それは仕方がないことです。でも言える状況にあるなら、言ってほしいというのが、実務家としての本音です。

どうしても言えない場合:遺言書とは別に、自筆の手紙を残す

言えない事情がある場合、「では公正証書遺言にして、遺言執行者を指定して、付言に理由を書けば安心」という話をよく聞きます。もちろんそれぞれ意味のある備えですが、それだけでは足りないことがあります。

そこで一つ、考えてほしい方法があります。

遺言書とは別に、自筆の手紙を残すことです。

家族に遺言書の内容を伝えられない場合に、公正証書遺言、遺言執行者、自筆の手紙で備える方法を説明したチェックリスト

公正証書遺言に入れる付言事項は、形式的に整えられているがゆえに、「本当に親が言いたかったことか」「誰かが書かせたものではないか」という疑念が残ることがあります。

一方で、自筆の手紙には、本人の筆跡があります。言葉遣い、言い回し、字のクセも残ります。それ自体が、「これは本人が自分の言葉で書いたものだ」と受け止めてもらいやすい材料になります。

もちろん、それだけで疑念が完全になくなるわけではありません。それでも、整えられた活字の文章だけより、本人の思いとして受け止められやすい場面はあります。

また、手紙は法的な財産承継を定めるための文書ではなく、気持ちを伝えるための文書として位置づけます。そのため、遺言書本文では書きにくい泥臭い言葉や、格好悪い本音も残しやすくなります。

たとえばこんな内容です。

「○○へ。今回の遺言書の内容を見て、つらい思いをさせるかもしれない。けれど、お前のことを大切に思っていないわけではない。長男には、毎日の世話や通院の付き添いで長い間苦労をかけた。そのことを踏まえて、悩んだうえでこの内容にした。どうか、私の気持ちも少しだけ分かってほしい」

こういった言葉は、整った付言事項には書けません。でも手紙なら書けます。

手紙を書く際の注意点

ただし、一つだけ必ず守ってほしいことがあります。

手紙の中に「財産の分け方」を書かないことです。

「自宅はやはり次女に渡したい」「預金の半分は長男に」といった内容を書くと、遺言書と手紙の内容が矛盾したとき、どちらが本人の最終意思なのかという問題が生じます。

また、手紙の内容や形式によっては、「これは新たな自筆証書遺言なのか」「以前の遺言書の内容を変更する趣旨なのか」といった余計な争点を生む可能性もあります。

手紙の役割は、財産の指定ではなく、理由と気持ちを伝えることに絞ってください。

手紙の冒頭に、こう書いておくと安全です。

「この手紙は遺言書ではありません。遺言書の内容を決めた理由と、家族への気持ちを伝えるために書くものです。財産の分け方については、別に作成した遺言書に記載しています」

手紙の保管についても考えておく

手紙を多くもらう側の相続人が保管していると、「後から作ったものでは」と疑われることがあります。できれば司法書士などの専門家が預かるか、遺言書を作成した時期と近い日付で書かれていることが分かる形で保管しておくことが、後の信頼性につながります。

遺言書は、家族関係を守るツールではありません

遺言書は、相続手続きを法的に整えるための道具です。財産を誰に渡すかを定める機能は持っていますが、家族の感情を整理したり、関係性を守ったりする力はありません。

切れ味のある道具ではあります。使い方次第で、相続手続きをスムーズにすることも、家族の間に深い溝を作ることもあります。ただし道具に感情はありません。それを使う側の準備が問われます。

「遺言書さえ作っておけば大丈夫」ではないことを、多くの相談現場で感じています。法的な手続きを整えることと、家族の関係を守ることは、別の問題です。前者は遺言書で対応できますが、後者は生きているうちの言葉と行動でしか対応できません。

偏りのある分配、どう準備すればいいか迷っている方へ

「家族に言うべきか」「どう伝えればいいか」「言えない場合にどう備えるか」という段階からご相談いただけます。遺言書の文案だけでなく、作成の進め方、自筆の手紙の内容、遺言執行者の指定まで含めて、一緒に考えます。

 遺言書の作成について相談する

よくある質問

Q 分配に偏りがある遺言書を、内緒のまま作っても有効ですか?

有効です。遺言書は本人の意思能力と方式が揃っていれば、家族への事前通知なしに作成しても有効です。ただし、遺留分を侵害している場合は、相続開始後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。「内緒で作れるか」という問題と、「相続後に争いになりにくい内容か」という問題は、分けて考える必要があります。

Q 付言事項に理由を書いておけば、家族は納得してくれますか?

必ずしもそうとは限りません。特に、多くもらう側の相続人が遺言書作成に関わっている場合、付言の内容が本当に本人の意思なのかを疑われることがあります。付言は生前の説明を補うものですが、その代わりにはなりません。

Q 自筆の手紙を遺言書の代わりに使えますか?

使えません。また、使おうとすべきではありません。財産の分け方に法的な効力を持たせるには、法律で定められた方式を満たした遺言書が必要です。むしろ実務上怖いのは、気持ちを伝えるつもりで書いた手紙に日付や署名・押印があり、遺言書の方式を満たしてしまうケースです。そうなると、正式な遺言書の内容と矛盾が生じ、余計な争点を生む可能性があります。手紙はあくまで「気持ちを伝える読み物」に徹してください。

Q 生前に話すと、確実に揉めます。それでも話した方がいいですか?

一概には言えません。ただ、死後に揉めるよりも、生前に揉める方が対話の余地があります。生前であれば疑問に答えることができ、誤解を解く機会もあります。揉めることへの覚悟と、子どもたちの将来の関係を天秤にかけて判断してください。

Q 遺留分を侵害していなければ、どんな分配でも問題ありませんか?

法律上は問題ありません。ただし、遺留分を侵害していなくても、相続人が感情的に納得していない場合、相続後の手続きや関係性に影響が出ることがあります。法的な問題がないことと、家族関係への影響は別の問題です。

Q どうしても言えない場合、何をすべきですか?

まず、遺言書は公正証書遺言として作成しておくことをおすすめします。次に、遺言執行者を中立な専門家に指定する。そして、遺言書とは別に自筆の手紙を残す。この3つが、言えない場合の現実的な備えです。ただし、いずれの方法でも、争いをゼロにするものではありません。あくまでも、影響を小さくするための備えです。

まとめ

分配に偏りがある遺言書を内緒のまま作ることは、法律上可能です。ただしそれは、争いを防ぐのではなく、死後に先送りしているだけである可能性があります。

付言事項で理由を残すことはできますが、遺言書作成の経緯への疑念がある場合、その言葉は届きにくくなります。

できることなら、生きているうちに本人の口から伝えてほしいと思います。親と特定の子どもとの関係がギクシャクするかもしれません。でも子どもたちの関係は、内緒のままよりずっとましになる可能性があります。

どうしても言えない場合は、遺言書とは別に自筆の手紙を残すことも一つの方法です。整えられた活字の付言事項では伝わりにくい、本人らしい言葉と筆跡で気持ちを残すことができます。ただし手紙には、財産の指定は書かないでください。

遺言書は法的な手続きのツールです。家族の感情や関係性を整えるツールではありません。法的な準備と、家族への言葉は、どちらも大切ですが、別のものです。

遺言書の内容から家族への伝え方まで、吉原合同事務所へご相談ください

「偏りのある内容をどう組み立てるか」「家族にどう伝えるか」「言えない場合にどう備えるか」という段階からご相談いただけます。当事務所では、自筆証書遺言・公正証書遺言いずれの作成サポートも承っています。

千葉市緑区あすみが丘を拠点に、千葉市内および周辺地域の遺言書作成のご相談に対応しています。お気軽にご相談ください。

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