司法書士
吉原有規
司法書士吉原合同事務所代表。
モットーは「納得できる相続を増やす」こと。相続専門の司法書士として、誰に相談したらよいかわからない悩みを丁寧にお聞きし、一緒にベストな解決策を考えることで、「納得の相続」を増やしていくことを目指している。
趣味は旅行とグルメ。自分の直感で選ぶと大体失敗することから、旅の前には情報を徹底的に調べ、実際に行った人の声や情報を参考にしながら評価が高いところを巡っている。
[生前対策]
遺言執行者は本当に必要なのか、指定すべきケース・不要なケースを司法書士が解説します。相続人以外への遺贈、清算型遺言、家族と専門家どちらに任せるべきかなど、遺言書作成前に確認したいポイントを整理します。
目次
遺言書の作成をご相談いただく際に、よくいただく質問です。
結論からいうと、遺言執行者はすべての遺言書で必ず必要になるものではありません。
相続人に不動産や預貯金を相続させる内容で、相続人同士の関係も良好であれば、遺言執行者がいなくても手続きを進められることがあります。
一方で、遺言執行者を指定しておく重要性が高いケースもあります。
たとえば、相続人以外の人に不動産を遺贈する場合、不動産を売却して代金を分配する場合、遺言による認知・推定相続人の廃除をする場合などです。このようなケースでは、遺言執行者がいないと手続きが進みにくくなることがあります。
また、遺言執行者を指定する場合には、「誰を指定するか」も重要です。遺言執行者には、相続人への通知・財産目録の作成・手続きの報告など、法律で定められた固有の義務があります。単に不動産の名義変更や預金の解約をするだけではありません。
そのため、遺言執行者については、次の3つを分けて考える必要があります。
このコラムでは、相続登記・預貯金・株式などの手続き別に、遺言執行者が必要なケース・不要なケース・専門家に任せた方がよいケースを、司法書士の実務目線で解説します。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。法律上は「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」とされています(民法第1012条)。
遺言執行者が選任されると、相続人は相続財産の処分など、遺言の執行を妨げる行為をすることができなくなります(民法第1013条)。つまり、遺言執行者がいることで、特定の相続人が勝手に財産を処分したり、手続きを妨害したりすることを防ぐ効果があります。

遺言執行者を指定すべきかどうかは、遺言の内容と家族構成によって変わります。
相続人以外への不動産遺贈
内縁の配偶者・お世話になった人・相続人ではない孫・法人や団体などに不動産を遺贈する場合、遺言執行者がいないと登記手続きで相続人全員の協力が必要になることがあります。財産を取得しない相続人に実印の押印や印鑑証明書の提出をお願いする必要が生じることがあり、協力が得られないと手続きが止まってしまいます。
不動産を売却して代金を分配する遺言(清算型)
「実家を売却して、子ども3人で均等に分ける」といった内容の遺言では、誰が売却手続きを進めるのか、費用をどう精算するのか、代金をどう分配するのかを実行する人が必要になります。遺言執行者がいない場合、相続人全員が売主側として手続きに関わる必要が生じ、1人でも非協力だと進まなくなることがあります。
遺言による認知・推定相続人の廃除
遺言による認知や推定相続人の廃除は、法律上、遺言執行者が手続きを行うことが前提となっています。これらの内容を遺言に盛り込む場合は、遺言執行者を必ず指定しておく必要があります。
次のような場合は、遺言執行者を指定しなくても手続きを進められることがあります。
このような場合は、専門家を遺言執行者に指定する費用をかけなくても、相続人自身で手続きを進める方が現実的なこともあります。
遺言執行者の指定が必要かどうかは、手続きの種類によっても変わります。「法律上、遺言執行者がいないと困難になるケース」と「法律上は不要でも、手続きの負担が大きいケース」を分けて整理します。
先に結論を整理すると、次のようになります。

| 手続き・遺言内容 | 遺言執行者の必要性 | 自分でやる場合の負担感 |
|---|---|---|
| 相続人以外への不動産遺贈 | 必須に近い。指定を強く推奨 | 遺言執行者がいないと相続人全員の協力が必要になり、1人でも非協力だと止まる |
| 相続人以外への預貯金・株式の遺贈 | 強く推奨 | 金融機関・証券会社との調整で相続人側の協力が問題になりやすい |
| 不動産を売却して代金を分配する遺言(清算型) | 強く推奨 | 売却手続き・費用精算・代金分配の負担が大きい |
| 遺言による認知・推定相続人の廃除 | 必須(法律上、遺言執行者が手続きを行う) | 遺言執行者がいないと手続き自体が進まない |
| 相続人への不動産相続 | 必須ではないことが多い | 登記申請は手間だが不可能ではない。遺言書の文言次第で詰まることもある |
| 預貯金(口座少・相続人少・関係良好) | 不要なことが多い | 平日に時間があれば自力で進められることが多い |
| 預貯金(口座多・相続人多) | 必須ではない | 金融機関ごとに書類・対応が異なり、調整の負担が大きい |
| 株式・証券口座 | 必須ではない | 預金より手続きが複雑になりやすく、不備での差し戻しも起きやすい |
| 相続人が少なく、財産がシンプル、全員協力的 | 不要なことが多い | 自力で十分回せるケースも多い |

遺言執行者を指定する場合に忘れがちな論点があります。遺言執行者は、単に不動産の名義変更や預金の解約をするだけの人ではありません。
就任後は、法律で定められた固有の義務を負います。これは、相続人が遺言執行者になる場合でも、専門家を指定する場合でも同様です。
相続人への通知義務(民法第1007条2項)
遺言執行者に就任した後、速やかに遺言の内容を相続人全員に通知しなければなりません。疎遠な相続人や、財産をもらえない相続人に対しても通知する必要があります。
財産目録の作成・交付義務(民法第1011条1項)
相続財産を調査し、財産目録を作成して相続人全員に交付しなければなりません。財産の内容・額を正確に把握して書面にまとめる必要があります。
手続き経過を報告する義務(民法第1012条3項による委任規定の準用)
相続人から求められれば手続きの進捗を報告し、完了後は結果を報告する義務があります。
これらの義務は身内であっても免除されません。通知や目録作成に不備があると、他の相続人から「財産を隠しているのではないか」と疑われたり、責任を問われたりすることがあります。
遺言執行者に指定された人は、手続きの代行だけでなく、こうした法的な義務を確実に果たすことが求められます。
遺言執行者を指定する場合、家族・相続人でよいのか、専門家を指定した方がよいのかを判断する必要があります。
相続人や家族を遺言執行者に指定すること自体は可能です。次のような場合は、家族を遺言執行者にしても問題なく進められることがあります。
このような場合は、専門家を遺言執行者に指定する費用をかけず、家族が手続きを進める選択も現実的です。
ただし、家族を遺言執行者にする場合でも、相続人への通知・財産目録の作成・手続き経過の報告などは必要になります。遺言執行者として何をする必要があるのかを理解したうえで指定しておくことが大切です。
一方で、次のような場合は、司法書士などの専門家を遺言執行者に指定することを検討した方がよいでしょう。
専門家を遺言執行者に指定する意味は、単に手続きを代行してもらえるという点だけではありません。通知・財産調査・財産目録の作成・各種手続き・手続き経過の報告まで、法律上の義務を含めて整理して進められる点にあります。
特に、相続人同士の関係に不安がある場合は、相続人の一人が手続きを進めるよりも、専門家が遺言の内容を実現する立場で進めた方が、他の相続人からの不信感を抑えやすくなります。
| 依頼先 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 遺産総額の1%前後+最低報酬30万円程度 | 登記費用が別途かかる事務所も多い |
| 弁護士 | 遺産総額の1〜3%程度 | 紛争性がある場合に強み |
| 信託銀行 | 遺産総額の1〜1.5%程度 | 最低手数料100万円前後が多く、不動産登記は別途費用が発生することがある |
遺言執行者の報酬を見ると、「遺産総額の何%」という数字だけに目が行きがちです。しかし、実際には次の費用が別途かかるかどうかで総額が変わります。
そのため、単純に報酬率が低いかどうかだけではなく、どこまでの業務が含まれているかを確認することが重要です。
当事務所では、遺言執行者報酬を、原則として遺産総額の1%+30万円+消費税を基準にご案内しています。
この報酬には、以下の業務が原則として含まれます。
ただし、すべてのケースで専門家を遺言執行者に指定すべきとは限りません。
相続人が少なく、財産内容もシンプルで、相続人同士の関係も良好な場合は、家族を遺言執行者にする、または遺言執行者を指定しない方が合理的なこともあります。
当事務所では、遺言書作成の段階で、専門家を指定すべきか、家族を指定すれば足りるか、そもそも遺言執行者を指定しなくてもよいかを含めてご案内しています。
遺言執行者を指定していても、遺言書の内容が曖昧だと、手続きがスムーズに進まないことがあります。
たとえば、「預金を長男に任せる」「不動産は家族で話し合って決める」といった表現では、誰がどの財産を取得するのかがはっきりせず、相続開始後に解釈をめぐって問題になる可能性があります。
遺言執行者は、あくまで遺言書に書かれた内容を実現する人です。遺言執行者を誰にするかだけでなく、遺言書の内容自体を明確にしておくことが重要です。
遺言執行者は、すべての遺言書で必ず必要になるものではありません。
ただし、相続人以外への遺贈や、相続人同士の関係に不安がある場合など、指定しておいた方がよいケースもあります。「自分のケースで遺言執行者が必要か知りたい」という段階でもご相談いただけます。
吉原合同事務所では、千葉市緑区あすみが丘を拠点に、遺言書の作成から遺言執行者の指定、相続開始後の執行手続きまで一括してサポートしています。
遺言書があっても、遺言執行者がいない場合、遺言の内容や手続き先によっては、相続人全員の関与を求められたり、金融機関ごとに追加書類を求められたりすることがあります。相続人全員の協力が得られれば問題なく進むケースもありますが、協力が得られない場合は手続きが止まることがあります。なお、遺言執行者が指定されていない場合、家庭裁判所に申し立てて選任してもらうこともできます。
取得する人が相続人で、遺言書の文言が明確であれば、遺言執行者がいなくても登記を進められることがあります。ただし、遺言書の表現が少しでも曖昧な場合、法務局から相続人全員の関与を求められることがあります。また、他の財産手続きもまとめて進める必要がある場合は、遺言執行者を指定しておいた方が手続き全体を整理しやすくなります。
預金口座が少なく、相続人同士の関係が良好であれば、遺言執行者なしで進められることもあります。ただし、金融機関ごとに必要書類や取扱いが異なるため、口座数が多い場合や相続人の協力に不安がある場合は、遺言執行者を指定しておく意味があります。
指定を検討した方がよいケースが多いです。証券口座の相続手続きでは、名義変更・移管・口座開設などが必要になることがあり、預金よりも手続きが複雑になることがあります。複数の金融商品がある場合は、遺言執行者が窓口となることで手続きを整理しやすくなります。
相続人以外の人に不動産や預貯金を遺贈する場合は、遺言執行者を指定しておく重要性が高いです。遺言執行者がいないと、相続人全員の協力が必要になることがあり、相続人の協力が得られないと手続きが進みにくくなる可能性があります。
不動産を売却して現金で分配する内容(清算型遺言)では、誰が売却手続きを進めるのか、費用をどう精算するのか、代金をどう分配するのかを実行する人が必要になります。遺言執行者を指定しておくことで、これらの手続きを明確に進めやすくなります。指定がない場合、相続人全員での対応が必要になることがあります。
遺言による認知や推定相続人の廃除は、法律上、遺言執行者が手続きを行うことが前提となっています。遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所に申し立てて選任してもらう必要があります。これらの内容を遺言に盛り込む場合は、遺言執行者を必ず指定しておくことをおすすめします。
必ずしも不要とは言えませんが、相続人が少なく関係も良好でシンプルな財産構成であれば、遺言執行者なしで手続きを進められるケースもあります。ただし、手続きが長引く中で意見の相違が生じることもあります。個別の状況によって判断が変わるため、ご相談いただくことをおすすめします。
遺言書に記載した遺言執行者の指定は、遺言書を書き直すことで変更できます。また、遺言執行者が就任後に辞任することも、正当な事由がある場合は可能です。指定した専門家が廃業していた・死亡していたなどの事態に備えて、予備の遺言執行者を指定しておく方法もあります。
遺言執行者が選任されると、相続人は遺言の執行を妨げる行為(相続財産の勝手な処分など)ができなくなります。ただし、遺言執行者が関与するのは、あくまで遺言の内容を実現するための手続きの範囲です。相続に関するすべての権限が相続人から奪われるわけではありません。
不動産の相続登記、預貯金の解約、戸籍収集、財産目録の作成などをまとめて進めやすい点です。また、相続人への通知・報告など遺言執行者としての義務も確実に果たせるため、相続人間の不信感を抑えやすくなります。特に不動産が含まれる相続では、登記手続きまで一体で対応できるため、相続人の負担を減らしやすくなります。
専門家を遺言執行者に指定する場合は、報酬の定めを遺言書に記載しておくことをおすすめします。報酬の定めがない場合、後から相続人との間で費用感にズレが生じることもあるため、事前に確認しておくと安心です。
遺言執行者は、すべての遺言書で必ず必要になるものではありません。
相続人に不動産や預貯金を相続させる内容で、相続人同士の関係も良好であれば、遺言執行者がいなくても手続きを進められることがあります。
一方で、相続人以外への遺贈、不動産を売却して代金を分配する清算型遺言、遺言による認知・推定相続人の廃除などでは、遺言執行者を指定しておく重要性が高くなります。
また、遺言執行者を指定する場合は、誰に任せるかも重要です。遺言執行者には、相続人への通知・財産目録の作成・手続き経過の報告など、法律で定められた固有の義務があります。
家族を遺言執行者に指定しても問題ないケースもありますが、財産が複数ある場合・相続人同士の関係に不安がある場合・他の相続人から不信感を持たれそうな場合は、専門家を遺言執行者に指定することも検討した方がよいでしょう。
大切なのは、「遺言執行者をつけるかどうか」だけでなく、「誰に任せれば、亡くなった後の手続きがきちんと進むか」まで考えて遺言書を作ることです。
複数当てはまる場合は、遺言執行者を指定するかどうかだけでなく、誰に任せるかを含めて専門家に確認しておくと安心です。
遺言執行者は、すべての遺言書で必ず必要になるものではありません。
相続人に財産を相続させる内容で相続人同士の関係も良好であれば、遺言執行者がいなくても手続きを進められるケースがあります。一方で、相続人以外への遺贈・不動産の売却・代金分配・複数の預貯金や証券口座・相続人同士の関係に不安がある場合は、遺言執行者を指定しておいた方がよいケースもあります。
また、遺言執行者を指定する場合は、家族に任せてよいのか、司法書士などの専門家を指定した方がよいのかも重要です。当事務所では、遺言書の内容だけでなく、相続開始後に実際に必要となる手続きまで見据えて、遺言執行者を指定すべきか、誰に任せるべきかを一緒に整理します。
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