司法書士
吉原有規
司法書士吉原合同事務所代表。
モットーは「納得できる相続を増やす」こと。相続専門の司法書士として、誰に相談したらよいかわからない悩みを丁寧にお聞きし、一緒にベストな解決策を考えることで、「納得の相続」を増やしていくことを目指している。
趣味は旅行とグルメ。自分の直感で選ぶと大体失敗することから、旅の前には情報を徹底的に調べ、実際に行った人の声や情報を参考にしながら評価が高いところを巡っている。
[相続発生後の手続き]
古い遺産分割協議書を使って相続登記をする場合の注意点を司法書士が解説します。遺産分割協議書や印鑑証明書の有効期限、印鑑証明書を紛失した場合やコピーしかない場合、協議に参加した相続人が死亡している場合など、ケースごとの対応について紹介します。
相続が発生した際に遺産分割協議書を作成したものの、不動産の相続登記をしないまま何年も経ってしまった、というケースがあります。
いざ相続登記をしようとして、
「10年以上前の遺産分割協議書だけど、まだ使えるの?」
「昔の印鑑証明書でも大丈夫?」
「印鑑証明書が見つからない」
「印鑑証明書がコピーしか残っていない」
「遺産分割協議書に押印した相続人がすでに亡くなっている」
といった問題が出てくることもあります。
結論からいうと、遺産分割協議書や印鑑証明書そのものに、作成・発行からの年数による有効期限はありません。 古いという理由だけで、これらの書類が使えなくなるわけではありません。
ただし、長期間相続登記をしていなかった場合には、印鑑証明書を紛失している、協議に参加した相続人がすでに亡くなっているなど、書類の有効期限とは別の問題が生じることがあります。
この記事では、古い遺産分割協議書を使って相続登記をする場合の注意点について、ケースごとに解説します。
遺産分割協議書には、「作成してから○年以内でなければ相続登記に使えない」といった有効期限が定められているわけではありません。
そのため、10年前、20年前に作成した遺産分割協議書であっても、作成から時間が経過しているという理由だけで使えなくなるわけではありません。
相続人全員によって遺産分割協議が成立し、その内容を確認できる遺産分割協議書が残っているのであれば、その協議書を利用して現在になってから相続登記を行える場合があります。
そこで、ここからは書類の残り方や相続人の状況ごとに見ていきます。
遺産分割協議による相続登記では、原則として、遺産分割協議書に相続人が実印を押印し、その印鑑証明書を添付します。
この印鑑証明書については、「発行後3か月以内」などの有効期限はありません。

したがって、遺産分割協議書を作成した当時の印鑑証明書の原本が残っているのであれば、何年も前に発行されたものであるという理由だけで、新しい印鑑証明書を取得し直さなければならないわけではありません。
例えば、15年前に遺産分割協議書を作成し、その当時の印鑑証明書も一緒に保管していた場合には、まずはその書類を利用して相続登記を進められるか確認することになります。
その後に実印を変更していたとしても、当時の遺産分割協議書に押された印鑑に対応する印鑑証明書の原本が残っているのであれば、大切に保管しておきましょう。
遺産分割協議書の原本は残っているものの、当時の印鑑証明書を紛失してしまっているケースもあります。
この場合、遺産分割協議に参加した本人が現在も存命であれば、比較的対応しやすいことがあります。
現在も遺産分割協議書に押したものと同じ実印を登録しているのであれば、現在の印鑑証明書を取得する方法が考えられます。
一方、その後に改印しており、遺産分割協議書に押された印鑑と現在の実印が異なる場合には、現在の実印と印鑑証明書によって改めて確認できるようにするなど、個別に対応方法を検討する必要があります。
具体的な対応方法は、遺産分割協議書やそのほかの資料がどのような状態で残っているかによって異なります。
つまり、当時の印鑑証明書を紛失していたとしても、本人が存命で協力を得られるのであれば、直ちに相続登記ができなくなるわけではありません。
問題が大きくなりやすいのは、本人がすでに亡くなっており、新たな印鑑証明書を取得することができない場合です。
古い相続では、
「遺産分割協議書の原本はあるけれど、印鑑証明書はコピーしか残っていない」
ということもあります。
印鑑証明書のコピーが残っていることは、当時の遺産分割協議の状況を確認するうえで重要な資料となる可能性があります。
しかし、印鑑証明書のコピーがあるからといって、当然に印鑑証明書の原本に代えて相続登記に使用できるわけではありません。
本人が存命であれば、現在の印鑑証明書を取得したり、必要に応じて現在の実印と印鑑証明書によって改めて確認できるようにしたりする方法を検討できます。
一方、本人がすでに亡くなっている場合には、新たな印鑑証明書を取得することができません。
このような場合、コピーだけで相続登記ができるとは限らないため、残っている遺産分割協議書や印鑑証明書のコピーなどを確認したうえで、管轄法務局への事前確認を含め、個別に対応方法を検討する必要があります。
印鑑証明書のコピーしか残っていない場合も、「コピーだから意味がない」と考えて処分せず、ほかの相続関係書類と一緒に保管しておきましょう。
古い遺産分割協議書を使った相続登記で、特に問題となりやすいケースです。
例えば、次のような場合です。

長女が存命であれば、本人に改めて協力してもらうことが考えられます。
しかし、すでに亡くなっている以上、本人の印鑑証明書を新たに取得することはできません。
このような場合について、登記実務上は、亡くなった相続人の相続人全員から、その方が生前に当該遺産分割協議を真正に行った旨を証明してもらい、その相続人らの印鑑証明書を添付する方法が検討されます。
当時は兄弟2人だけで作った遺産分割協議書でも、1人が亡くなり、その方に配偶者と子どもがいると、今度はその相続人全員の協力が必要になることがあります。
その間にさらに相続が発生していれば、関係者が何人にも増えている場合もあります。
そのため、昔の遺産分割協議書を長期間放置していると、当時は少人数で済んでいた手続きが、その後の相続によって多数の人の協力を必要とする手続きになることがあります。
古い遺産分割協議書があり、協議に参加した方がすでに亡くなっている場合には、まず当時の書類がどこまで残っているのかを確認することが重要です。
印鑑証明書だけではなく、遺産分割協議書そのものの原本が見つからず、コピーしか残っていないケースもあります。
この場合は、さらに慎重な検討が必要です。
遺産分割協議に参加した相続人全員が存命で協力を得られるのであれば、当時の遺産分割の内容を確認したうえで、改めて必要な書類を作成することも考えられます。
一方、当時の遺産分割協議に参加した相続人がすでに亡くなっている場合には、単純に書類を作り直すことができないことがあります。
遺産分割協議書のコピーだけで相続登記ができるとは限らないため、当時の遺産分割協議が成立していたことをどのように確認・証明するかを含め、個別に検討する必要があります。
この場合も、コピーだから不要だと判断して処分するのではなく、そのほかの相続関係書類と一緒に専門家へ見せることをおすすめします。
遺産分割協議書は、相続登記が終わったからといって、すぐに処分してよい書類ではありません。
相続手続きを行った当時は把握していなかった不動産や預貯金、株式などの財産が、後になって見つかることがあります。
また、過去に一部の手続きだけを済ませており、別の財産については名義変更がされないまま残っていた、というケースもあります。
そのような場合、以前作成した遺産分割協議書の内容によっては、新たに相続人全員で遺産分割協議をやり直すことなく、残っていた相続手続きを進められる可能性があります。
一方、遺産分割協議書を処分してしまっていると、当時どのような内容で遺産分割をしたのかを証明することが難しくなり、手続きが複雑になることがあります。
そのため、遺産分割協議書は、相続登記や預貯金の解約など一通りの相続手続きが終わった後も、基本的には大切に保管しておくことをおすすめします。
特に古い遺産分割協議書が見つかった場合には、書類が古いからといって処分せず、次の点を確認しましょう。
判断がつかない場合には、遺産分割協議書だけでなく、一緒に保管されていた印鑑証明書、戸籍、登記関係書類などもまとめて確認することが重要です。

遺産分割協議書には、「作成後○年以内」といった有効期限はありません。
そのため、10年前、20年前に作成された古い遺産分割協議書であっても、年月が経過しているという理由だけで相続登記に使えなくなるわけではありません。
また、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書にも、「発行後3か月以内」といった有効期限はありません。
一方で、印鑑証明書を紛失している、コピーしか残っていない、協議に参加した相続人がすでに亡くなっている、遺産分割協議書自体がコピーしかないといった事情がある場合には、それぞれ対応方法を検討する必要があります。
特に古い相続では、その後に相続人が亡くなったことで関係者が増え、時間が経つほど手続きが複雑になっていることもあります。
昔の遺産分割協議書が見つかり、「この書類で今から相続登記ができるのだろうか」とお困りの場合には、書類を作り直したり処分したりする前に、残っている資料一式を確認することが重要です。
吉原合同事務所では、古い遺産分割協議書を使用した相続登記についても、現在残っている書類や相続関係を確認したうえで、手続き方法を検討いたします。
「昔の遺産分割協議書しか残っていない」「印鑑証明書が見つからない」「協議をした相続人がすでに亡くなっている」といった場合も、まずはお手元に残っている資料をご用意のうえ、ご相談ください。
※相続登記の取扱いは、遺産分割協議書の内容や保管されている資料、相続関係などによって異なります。実際の手続きにあたっては、管轄法務局への確認が必要となる場合があります。
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