司法書士
吉原有規
司法書士吉原合同事務所代表。
モットーは「納得できる相続を増やす」こと。相続専門の司法書士として、誰に相談したらよいかわからない悩みを丁寧にお聞きし、一緒にベストな解決策を考えることで、「納得の相続」を増やしていくことを目指している。
趣味は旅行とグルメ。自分の直感で選ぶと大体失敗することから、旅の前には情報を徹底的に調べ、実際に行った人の声や情報を参考にしながら評価が高いところを巡っている。
[相続発生後の手続き]
昔売ったはずの土地が、登記簿上は親名義のまま残っていた場合の対処法を司法書士が解説します。まず買主を探して名義変更を求め、買主が動かない場合は相続登記で名義を整理するという実務上の流れを、登録免許税や遺産分割協議書の書き方も含めて整理します。
目次
相続登記を進めるために不動産を調査していると、登記簿上、亡くなった親名義の土地が見つかることがあります。
ところが、家族に確認すると「その土地は昔売ったはずだ」という。古い書類を探すと、確かに売買契約書がある。代金も受け取っている。それなのに、登記簿を見ると所有者は今でも親の名義のままになっている。
このような場合、対応の流れは大きく2つです。

まずは売買契約書などを確認して買主を探し、買主へ名義変更を求めます。これが一番きれいな解決です。
一方で、買主と連絡が取れない、買主がすぐに動かないという場合は、親名義のまま放置せず、相続登記で名義を整理しておくことが現実的な対応です。
このコラムでは、昔売った土地が親名義のまま残っていた場合に、実務上どのような順番で対応すればよいかを司法書士の視点から解説します。
最初に確認すべきなのは、本当に売却済みといえるかどうかです。
売買契約書が見つかれば大きな手がかりになります。ただし、契約書だけで必ず手続きが完了するとは限らないため、代金の支払い状況・買主の所在・現在も連絡が取れるかを確認します。
売買契約が成立して代金も支払われているなら、法律上の所有権はすでに買主に移っています(民法第176条)。登記名義が親のままでも、その土地は実質的には買主のものです。
ただし、親が亡くなったことで「買主に登記を移す義務」が相続人に引き継がれています。相続人は、この土地の登記を買主に移す義務を承継している状態です。これが出発点になります。
最初に動くべきは、買主と連絡を取り、名義変更を進めてもらうことです。これが一番きれいで、費用面でも合理的な解決策です。
売買契約書や当時の資料から買主を特定し、買主本人または買主側の関係者に連絡します。買主が法人や開発業者であれば、現在も会社が存続しているか、担当部署はどこかを確認します。
買主と連絡が取れ、手続きに協力してもらえる場合は、親名義から買主名義へ直接移転登記を進めます。相続登記を挟まないため、登録免許税は買主への移転分だけで済みます。
移転登記の費用(登録免許税・司法書士報酬)は、買主側が負担するのが原則です。当時の売買契約書に費用負担の定めがあればそれに従います。
注意点:相続人全員の協力が必要になります

この直接移転の方法では、売主側の登記義務者は相続人全員になります。相続人が複数いれば、全員の実印・印鑑証明書・戸籍関係書類が必要です。一人でも協力が得られない場合は手続きが止まります。相続人全員がすぐに動ける状況であれば、この方法が最もシンプルです。
次のような場合は、買主への直接移転をすぐに進めることが難しくなります。
このような場合、親名義のまま放置し続けることはおすすめできません。次の相続が発生すれば関係者がさらに増え、古い契約書も見つかりにくくなります。
そのため、買主への直接移転がすぐに進まない場合は、相続登記で親名義を解消しておくことが現実的です。遺産分割協議で窓口になる相続人を一人決め、その人に名義を集約して相続登記を行います。
そうすることで、将来買主が名義変更を求めてきたとき、あるいはこちらから名義の引き取りを求めるときに、その相続人一人で手続きを進められるようになります。他の相続人に何度も実印を求める必要がなくなります。
相続登記をすると、固定資産税評価額の0.4%の登録免許税がかかります。ただし、土地の固定資産税評価額が100万円以下の場合、相続登記の登録免許税が免税になる特例があります(租税特別措置法第84条の2の3)。
こういった土地は原野・山林・農地など評価額が低いケースが多いため、実際には登録免許税がかからないことも少なくありません。事前に評価証明書で確認しておきましょう。
なお、この免税措置は土地が対象で、建物は対象外です。買主への移転登記の登録免許税は別の問題になります。

いったん相続登記で名義を整理する場合、遺産分割協議書の書き方が重要です。単に「相続人○○が取得する」とだけ書くと、売却済みであることとの関係が分かりにくくなります。
次のような記載を入れておくと安心です。
「下記土地については、被相続人の生前に売却済みであることを相続人全員で確認する。ただし、登記名義が被相続人名義のまま残っているため、今後の買主への所有権移転登記手続に対応する目的で、相続人○○が相続により取得するものとする。相続人○○は、買主またはその承継人から所有権移転登記手続への協力を求められた場合には、必要な範囲でこれに協力するものとする。」
これを入れておくことで、他の相続人への誤解を防ぎ、後の手続きで誰が動くかが明確になります。
実際の文言は売買契約書の内容や相続人間の合意によって調整が必要です。
| 買主の状況 | 対応の目安 |
|---|---|
| 個人で存命、連絡が取れる | 手順①を進める。名義変更の費用負担も交渉する |
| すでに亡くなっている | 買主の相続人を確認。複数代にわたる場合は専門家に相談 |
| 開発業者で動かない | 手順②で相続登記をしておき、将来の手続きに備える |
| 会社が解散・消滅している | 対応が複雑になるため、早めに専門家に相談 |
2024年4月1日から、相続登記が義務化されています。相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
売却済みの不動産については、相続人が所有権そのものを取得したのかという点で整理が難しい面もあります。ただし、登記名義が親のまま残っている以上、放置してよいということにはなりません。放置するほど将来の手続きが複雑になります。
売買契約書の確認から買主への連絡調整、相続登記まで、状況に合わせた進め方をご相談いただけます。「何から手をつければいいか分からない」という段階からご相談いただけます。
吉原合同事務所では、千葉市緑区あすみが丘を拠点に、相続登記や古い不動産登記の整理に関するご相談に対応しています。
売却済みであることを踏まえた整理は必要ですが、親名義のまま放置する方が将来の手続きが難しくなることがあります。そのため、遺産分割協議書に売却済みであることを明記したうえで、相続登記により名義を整理しておくことは現実的な対応です。
移転登記の費用は買主側が負担するのが原則です。応じない場合は交渉が必要になります。相続登記で名義を整理した後、司法書士が登記手続に必要な書類や進め方を整理し、買主側へ手続きの案内を行うこともできます。費用負担で争いになる場合は、別途対応が必要です。
契約書がなくても、買主が土地を実際に使用している事実(建物が建っている、管理している等)や当時の関係者の証言などから、売買の事実を確認できる場合があります。まずはご相談ください。
売買契約書の確認・相続人の確定・買主側との調整・登記原因の整理など、通常の相続登記よりも確認事項が多くなります。状況が複雑な場合は専門家に相談して方針を決めておくことをおすすめします。
登記名義が親のままである以上、課税通知が相続人宛に来ることがあります。実際に土地を使用・管理しているのが買主であれば、固定資産税相当額の負担について買主側と話し合う余地があります。名義変更が完了すれば課税関係も整理されます。
買主の相続人を確認する必要があります。相続が複数代にわたっている場合は手続きが複雑になるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。
昔売った土地が親名義のまま残っていた場合の対応は2段階です。
まずは売買契約書などで買主を確認し、買主に名義変更を求めます。買主が動いてくれれば、相続登記の費用を省いて一番きれいに解決できます。
買主が動かない・連絡が取れない場合は、相続登記で親名義を解消しておくことが現実的です。遺産分割協議で窓口になる相続人を一人決めて名義を集約し、将来の移転手続きに備えます。その際、評価額が100万円以下の土地であれば登録免許税が免税になる特例があることも確認しておきましょう。
放置が一番のリスクです。今の相続手続きと合わせて、早めに整理しておくことをおすすめします。
買主の特定・連絡調整から相続登記・移転登記まで、一括してサポートします。千葉市緑区あすみが丘を拠点に、千葉市内および周辺地域のご相談に対応しています。お気軽にご相談ください。
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