司法書士
吉原有規
司法書士吉原合同事務所代表。
モットーは「納得できる相続を増やす」こと。相続専門の司法書士として、誰に相談したらよいかわからない悩みを丁寧にお聞きし、一緒にベストな解決策を考えることで、「納得の相続」を増やしていくことを目指している。
趣味は旅行とグルメ。自分の直感で選ぶと大体失敗することから、旅の前には情報を徹底的に調べ、実際に行った人の声や情報を参考にしながら評価が高いところを巡っている。
[相続発生後の手続き]
遺産分割協議書の作り方について、自分で作成できるケースと専門家に相談した方がよいケースを解説します。戸籍の読み取りによる相続人確定、不動産の記載方法、認知症・未成年・行方不明・非協力の相続人がいる場合の注意点まで、実務上つまずきやすいポイントを整理しています。
目次
「銀行から遺産分割協議書を提出するよう言われたが、何を作ればいいか分からない」 「ネットでひな形を見つけたが、このまま使っていいか不安」 「相続人の一人が認知症で、どうすればいいか困っている」 「疎遠な兄弟に連絡しないといけないが、どう進めればいいか分からない」
遺産分割協議書は、相続手続きの中でも特につまずきやすい書類のひとつです。
ひな形を埋めれば完成する書類ではありません。 相続人全員が有効に合意できる状態かを確認したうえで、財産を漏れなく特定し、それぞれの手続きに使える形で作成する必要があります。
この記事では、遺産分割協議書とは何か、自分で作れるケースと専門家に相談すべきケース、そして認知症・行方不明・非協力の相続人がいる場合の注意点を整理します。
次のいずれかに当てはまる場合は、ひな形を使って自分で作る前に、専門家へ相談することをおすすめします。
これらに当てはまる場合、遺産分割協議書を作成しても、預金解約や相続登記で使えないことがあります。
遺産分割協議書とは、相続人全員で「誰がどの財産を取得するか」を話し合い、その合意内容を書面にしたものです。
預貯金・不動産・株式・自動車などの相続手続きで使われます。
最も重要なのは、相続人全員の合意が必要という点です。 一部の相続人だけで作成した協議書は、原則として有効な遺産分割協議書とはいえません。相続人が10人いれば、10人全員の署名・実印による押印が必要です。
次のような手続きで、遺産分割協議書の提出を求められることが多いです。
なお、金融機関によっては独自の相続届で足りる場合もあります。ただし、不動産がある場合や財産が複数ある場合は、遺産分割協議書を作成することが一般的です。
次のようなケースでは、遺産分割協議書が不要になることがあります。
ただし、一見不要に見えるケースでも、財産の内容や金融機関の運用によっては必要になることがあります。まず確認することをおすすめします。
遺産分割協議書を作るには、まず「相続人が誰か」を確定する必要があります。これが、実は多くの方がつまずく最初の関門です。
2024年3月から戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地が遠方にある戸籍でも、最寄りの市区町村窓口で取得できるケースが増えました。そのため、戸籍を集める負担は以前より軽くなっています。
しかし、集まった戸籍を読んで相続人を漏れなく確定する作業は、全く別の話です。 ここが意外と難しいのです。
戸籍の読み取りが難しい理由はこうです。
読み誤りがあると、相続人が1人でも漏れた状態で協議書を作ることになります。 その場合、銀行・法務局から差し戻されるだけでなく、後から「自分も相続人だ」と主張されるリスクもあります。
シンプルな家族関係であれば自分で読み取れるケースもありますが、少しでも複雑な事情がある場合は、戸籍の読み取りだけでも専門家に確認してもらうことを強くおすすめします。
〔あわせて読みたい:相続人調査・戸籍収集の進め方〕(近日公開予定)
遺産分割協議書には、次の内容を記載します。
※各相続人の印鑑証明書を添付する必要があります。
不動産を記載するときは、普段使っている住所ではなく、登記簿上の「所在・地番・地目・地積」などで特定します。
このように、遺産分割協議書では登記簿の記載に合わせて不動産を特定する必要があります。不動産の表示が間違っていると、相続登記で補正や作り直しが必要になることがあります。
預貯金は、金融機関名・支店名・預金種別・口座番号を記載して、どの相続人が取得するかを明確にします。
次のような条件がそろっている場合は、自分で作成できることがあります。
ただし、実務上は「自分でできると思ってやってみたが、途中で挫折した」という方が非常に多い手続きです。後述するように、記載ミスやり直し・見落とし・登記申請書の作成など、想定外の作業が次々と出てきます。

次のような状況では、専門家への相談をおすすめします。
遺産分割協議書は書類を作るだけではなく、相続人全員が有効に合意できる状態かを確認することが重要です。 ひな形を埋めて全員に押印してもらっても、その合意が後から無効になるリスクがあるケースがあります。
銀行や法務局から書類を求められたけれど、何を作ればよいか分からないという段階でもご相談いただけます。相続人・財産内容・不動産の有無を確認し、必要な手続きを整理します。
「費用がかかるから自分でやってみよう」と考える方は多いです。ただ、実務的な観点からいうと、遺産分割協議書の手続きは最初から専門家に任せた方がトータルで安く・早く・確実に終わるケースがほとんどです。
遺産分割協議書の記載を間違えると、そこまでの全員分の署名・押印が無駄になります。特に多いのが不動産の記載ミスです。
たとえば、古い時代の登記簿に記載された内容で作成したところ、現在の登記簿の記載と異なっていて使えなかった、というケースがあります。不動産の登記は途中で地目変更・合筆・分筆・建物の変更などが行われていることがあり、素人が現在の正確な記載を把握するのは容易ではありません。
また、書き方の細かい差でも、法務局・金融機関から差し戻されることがあります。
子どもたちが千葉を出て遠方に住んでいるケースでは、署名・押印をもらうだけでも郵送のやり取りが必要です。書類に不備があるたびに再度郵送してやり直す手間と時間は、想像以上に大きな負担になります。
最初から正確な書類を一度で作成できれば、こうした往復は1回で済みます。
相続手続きを自分で進めようとすると、遺産分割協議書の作成だけでなく、次のような作業が次々と発生します。
確認すべきところ・注意すべきところは無数にあります。「自分でできると思ってやってみたが、途中で詰まって断念した」という方が実務上非常に多い手続きです。
費用がかなり高額になるのであれば話は別ですが、そうでなければ最初から専門家に依頼すべき手続きといえます。
「実家の土地と建物の手続きが終わった」と思っていても、実は見落とされやすい財産があります。
これらは固定資産税の通知書にも載っていないケースがあり、素人では気づきにくいです。
問題は、こうした見落としが次の相続で発覚したときです。
親の代で手続きが終わったと思っていたのに、時間が経って自分の相続の際に「実は一部が未分割だった」と判明する。そのころには兄弟が亡くなっており、その相続人である甥や姪まで関与が必要になる。相続人の数が大幅に増え、全員の協力を得なければ手続きが進まない。
万が一、協力を得られない相続人が出た場合、弁護士を入れて解決するために100万円以上の費用がかかるケースも出てきます。
今回の手続きできちんと全財産を確認しておけば、こうした問題は防げます。 専門家に依頼すれば、こうした見落としを防ぐ確認まで含めてサポートしてもらえます。変なところでコストを惜しまず、最初から任せることをおすすめします。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意が必要です。認知症の方・未成年の方・行方不明の方・連絡を取ったことのない相続人・協力してくれない相続人がいる場合は、通常よりも慎重に進める必要があります。状況に応じて進め方を整理します。

遺産分割協議書は、相続人全員が内容を理解し、納得したうえで署名・押印する必要があります。そのため、次のような状況では通常どおりに作成できないことがあります。
認知症の相続人がいる場合、その方が協議内容を理解し判断できなければ、通常どおり遺産分割協議書を作成することはできません。
他の相続人が代わりに署名・押印することはできません。 本人の実印を家族が勝手に押すこともNGです。
このような場合、必要に応じて成年後見人の選任を検討することになります。ただし、成年後見制度は遺産分割協議のためだけに一時的に使える制度ではなく、その後も継続する点に注意が必要です。 また、後見人が入ると、本人の利益保護の観点から、自由な分け方ができないことがあります。
なお、成年後見人が相続人の一人である場合など、利益相反が問題になるケースでは、別途、家庭裁判所で特別代理人の選任等が必要になることがあります。
相続人の中に未成年者がいる場合、親権者が代わりに遺産分割協議を行うことがあります。ただし、親権者自身も相続人である場合など、未成年者と親権者の利益が対立するケースでは、家庭裁判所で特別代理人の選任が必要になることがあります。
たとえば、父が亡くなり、母と未成年の子が相続人となる場合、母が子の代わりに協議に参加することには利益相反の問題が生じることがあります。この場合も早めに専門家へ相談することをおすすめします。
行方不明の相続人を除いて遺産分割協議書を作ることはできません。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるためです。
まず、戸籍の附票・住民票などで住所調査を行います。それでも所在が分からない場合は、不在者財産管理人の選任を検討することになります。長期間生死不明の場合は、失踪宣告が問題になることもあります。
なお、住所が判明していても、手紙に返事がない・協議に応じてもらえない場合は、行方不明とは別に、協力しない相続人への対応として考える必要があります。
通常より時間がかかるため、早めの相談が必要です。
前婚の子、認知された子、兄弟姉妹の代襲相続人など、戸籍調査で初めて相続人の存在が分かることがあります。
連絡を取ったことがなくても、相続人である以上、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。いきなり協議書を送りつけるのは避けた方がよいです。 最初の連絡方法を間違えると、不信感を持たれて協議が難しくなることがあります。
まずは相続が発生したこと、相続人に該当すること、手続きへの協力をお願いしたいことを丁寧に伝えることが大切です。専門家から通知・案内を行うことで、冷静に進めやすいケースもあります。
1人でも署名・押印に協力しない相続人がいると、遺産分割協議書は完成しません。預金解約や相続登記が止まることがあります。
協力しない理由はさまざまです。
まずは丁寧な説明と資料の整理が必要です。それでもまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を検討することになります。
なお、相続人間で明確な対立があり、代理人として交渉が必要な場合は、弁護士への相談が必要です。当事務所では、登記・書類作成・相続人調査の範囲で対応し、必要に応じて弁護士と連携して進めます。
| 状況 | 注意点 | 考えられる対応 |
|---|---|---|
| 認知症の相続人がいる | 本人が内容を理解して合意できない場合、通常どおり協議できない | 成年後見人・特別代理人の選任を検討 |
| 未成年の相続人がいる | 親権者と利益相反が生じる場合がある | 特別代理人の選任を検討 |
| 行方不明の相続人がいる | その人を除いて協議書を作ることはできない | 住所調査・不在者財産管理人・失踪宣告などを検討 |
| 連絡を取ったことのない相続人がいる | いきなり協議書を送ると不信感を持たれやすい | 戸籍調査後、丁寧な通知・説明を行う |
| 協力してくれない相続人がいる | 1人でも合意しなければ協議書は完成しない | 説明・交渉、難しい場合は遺産分割調停・弁護士を検討 |

千葉県内でも、実家・農地・山林・古い建物が相続財産に含まれるケースは少なくありません。不動産がある場合、遺産分割協議書の記載に特に注意が必要です。
よくある見落としのポイント
不動産の漏れを防ぐためには、固定資産税通知書だけでなく、名寄帳や登記情報を確認することが重要です。 特に、私道持分・ごみ置き場持分・共有持分・古い建物・評価額の低い山林などは、見落とされやすい財産です。
これらを見落としたまま手続きが終わったと思っていると、数十年後の次の相続で問題が発覚することがあります。そのころには相続人が増え、全員の協力を得るだけで大変な作業になります。
不動産の表示や共有持分・未登記建物・農地などを見落とすと、相続登記や売却手続きが止まることがあります。登記まで見据えた内容で作成することが大切です。
この流れの中で、①の相続人確定と②の財産調査が不十分だと、後から修正や追加の協議が必要になることがあります。 特に、後から財産が見つかったときのために、「本協議書に記載のない財産が判明した場合の取り決め」を入れておくことが実務上重要です。
実際の相続手続きで多い失敗を整理します。
こうした失敗は、後から修正するために全員に再度署名・押印を求めなければならないなど、大きな手間につながります。特に子どもたちが遠方に住んでいる場合、書類の郵送が何往復にもなり、精神的・時間的な負担が大きくなります。
認知症の程度によりますが、遺産分割協議の内容を理解し判断できない場合、通常どおり協議書を作成することはできません。他の相続人が代わりに署名・押印することもできません。成年後見人の選任や、利益相反がある場合は特別代理人の選任が必要になることがあります。早めに専門家へご相談ください。
原則としてできません。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、行方不明の相続人を除いて作成した協議書は有効とはいえません。住所調査を行い、それでも所在が分からない場合は、不在者財産管理人などの手続きを検討します。
はい。相続人である以上、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。前婚の子・認知された子・兄弟姉妹の代襲相続人など、戸籍調査で初めて相続人の存在が分かることもあります。連絡方法を誤ると協議が難しくなるため、専門家に相談したうえで進めることをおすすめします。
遺産分割協議書は相続人全員の合意が必要です。1人でも署名・押印に協力しない場合、協議書は完成しません。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を検討することになります。明確な対立がある場合は弁護士への相談も必要です。
不動産は住所ではなく、登記簿上の所在・地番・家屋番号などで特定する必要があります。古い登記簿の記載をそのまま使うと現在の記載と異なる場合があります。私道持分・ごみ置き場持分・マンション共有持分なども見落としやすいです。名寄帳や登記情報と照合して確認することをおすすめします。
戸籍は広域交付制度で集めやすくなりましたが、集まった戸籍を読んで相続人を確定する作業は別の話です。前婚・養子縁組・代襲相続・数次相続などが絡む場合、読み取りはかなり難しくなります。読み誤りがあると協議書が無効になるため、戸籍の読み取りだけでも専門家に確認してもらうことを強くおすすめします。
協議書に記載のない財産が見つかった場合、改めて全員で協議が必要になることがあります。最初の協議書に「本協議書に記載のない財産が発見された場合の取り決め」を入れておくと、後から対応しやすくなります。
相続人が少なく、家族関係がシンプルで、財産が預貯金中心のケースでは作成できる場合があります。ただし、戸籍の読み取り・不動産の記載・登記申請書・登録免許税の計算・必要書類の準備など、手続き全体を通じると挫折する方が多いのが実情です。費用が極端に高くなければ、最初から専門家に依頼することをおすすめします。
預金の相続手続きや相続登記で使用する場合、相続人全員の印鑑証明書を求められることが一般的です。金融機関によっては有効期限の取扱いが異なるため、提出先ごとに確認が必要です。
財産ごとに分けて作成することもあります。ただし、相続人全員がどの財産について合意したのか分かるようにしておかないと、後から財産漏れや内容の矛盾が問題になることがあります。全体の相続関係と財産内容を整理したうえで作成することが重要です。
相続人全員で話し合いがまとまっている場合でも、書類の内容に不備があると、預金解約や相続登記が進まないことがあります。
吉原合同事務所では、司法書士・土地家屋調査士・行政書士の資格を活かし、戸籍の読み取りによる相続人確定から、遺産分割協議書の作成・相続登記・未登記建物や農地の確認までまとめてサポートします。
実家・農地・山林・古い建物がある相続、または前婚・養子・代襲相続など家族関係が複雑なケースは、早めにご相談ください。私道持分・ごみ置き場持分など見落としやすい財産の確認まで含めてサポートします。
千葉県内の相続手続きでお困りの方は、まずご連絡ください。
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