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[生前対策]

代理人カードで認知症対策は大丈夫?銀行の代理人登録制度と家族信託の違い

  • 投稿:2026年05月06日
代理人カードで認知症対策は大丈夫?銀行の代理人登録制度と家族信託の違い

銀行の代理人登録制度(代理人カード)は、家族が預貯金を管理するうえで便利な制度ですが、認知症後の財産管理対策としては限界があります。本記事では、代理人登録制度でできること・できないこと、口座凍結のリスク、家族信託との違い、預貯金の認知症対策としてどの制度を選ぶべきかを、司法書士がわかりやすく解説します。

こんな経験はありませんか?

「親の通帳を管理できるようにしておきたい」

「介護費用を家族が引き出せるようにしたい」

「銀行の窓口で、代理人カードを勧められた」

こうした理由で、銀行の代理人登録制度を検討される方は少なくありません。手続きもシンプルで、費用もかからない。一見、手軽な認知症対策に思えます。

ただ、結論から先にお伝えします。

代理人登録制度だけでは、認知症後の財産管理対策として不十分です。

なぜそうなるのか、何が起きるのかを順を追って説明します。

最大の問題:必要になる場面で使えなくなる

代理人登録制度の本質的な問題はここです。

この制度は、本人の意思に基づく届出・委任を前提としています。そのため、本人の判断能力に疑義が生じると、金融機関としても本人の意思確認ができず、代理人による取引を制限せざるを得ない場面が出てきます。

しかも、金融機関が取引を制限するタイミングは、医師による認知症の診断後とは限りません。窓口での受け答えに違和感があった、家族から「最近様子がおかしい」と申告があった、キャッシュカードの紛失トラブルが続いた——こうした場面で、金融機関側が判断能力に懸念があると判断した段階で、事実上の制限がかかることがあります。

「昨日まで使えていたのに、今日突然止まった」という事態が起きるのはこのためです。

そして、タイミングが最も悪い。介護施設への入居が決まり、入居一時金の数百万円を動かしたい、毎月の施設利用料を継続して振り込みたい、自宅をバリアフリーにリフォームしたい——まさにまとまったお金が必要なそのタイミングで、口座が動かせなくなる。これが代理人登録制度の構造的な限界です。

代理人登録制度でできること・できないこと

制度の中身は金融機関によって異なります。一般的な範囲を整理すると以下のとおりです。

多くの金融機関で対応していること

  • 窓口での入出金
  • 残高照会
  • 代理人カードによるATM利用
  • 一定範囲内の振込

制限がある・できないことが多いこと

  • 定期預金の解約(本人確認が必要な場合が多い)
  • 大口の振込・送金(金額上限が設けられている場合がある)
  • 新規口座の開設・商品の変更
  • 本人の判断能力に疑義が生じた後の継続利用

また、代理人として登録できるのは、本人が元気で意思表示できるうちに限られます。認知症の診断後、あるいは窓口で本人の様子に違和感が生じた段階では、新規の登録を受け付けてもらえないケースがあります。

「そろそろ手続きしておこう」と思っていたら、もう間に合わなかった——そうした相談は実際に起きています。

代理人登録制度の「本来の使い道」

ただし、代理人登録制度が役に立たない制度というわけではありません。「目的が違う制度」と理解するのが正確です。

この制度が本来強いのは、以下のような場面です。

  • 本人は元気だが体が不自由で窓口に行けない
  • 日常的な入出金を家族にサポートしてもらいたい
  • 家族信託の準備期間中のつなぎとして活用する
  • 証券会社の代理人制度を利用して、照会や一部手続きを家族にサポートしてもらいたい

要するに、「元気な本人を日常的にサポートするツール」です。認知症対策の本命ではなく、あくまで補助的な手段として位置づけるべきです。

家族信託との違いを整理する

確認したいこと代理人登録制度家族信託
判断能力低下後の管理金融機関の判断で制限されることがある信託契約に基づき受託者が管理を継続
介護費用の継続支払い△ 日常範囲内に限られる◎ 長期管理が可能
まとまった資金の移動△ 金額・用途に制限がある場合○ 信託の目的の範囲内で対応可能
不動産の管理・売却× 対応していない○ 信託契約で設計できる
手続きのしやすさ◎ 手軽△ 専門家関与が必要
コスト低い比較的高い

預貯金の認知症対策として何が適切か

預貯金の認知症対策として、主な選択肢は3つです。

① 家族信託で信託口口座を作る

認知症になっても受託者が継続して管理できます。不動産も一緒に管理したい場合、複数の金融機関をまとめて管理したい場合、長期にわたる介護費用の支払いが想定される場合に向いています。

② 任意後見制度を使う

公正証書で任意後見契約を結んでおき、認知症になった後に家庭裁判所が後見監督人を選任してから効力が生じます。裁判所の監督が入るため客観性がある一方、家族信託より設計の柔軟性は下がり、費用も継続的に発生します。

③ 代理人登録をつなぎとして使いながら、家族信託を準備する

今すぐ信託の設定が難しい場合、まず代理人登録で日常の管理をカバーしながら、並行して信託契約の準備を進める方法です。代理人登録の限界を理解したうえで、あくまで短期の補助として使う前提であれば有効な使い方です。

こんな場合は代理人登録だけでは対応しきれません

以下のような状況であれば、代理人登録だけでは不十分な場面が出てくる可能性が高いです。

  • 自宅など不動産も管理・売却したい可能性がある
  • 複数の金融機関をまとめて家族に任せたい
  • 施設入居費・リフォーム代など、まとまった資金の移動が想定される
  • 長期的な介護費用の支払いが見込まれる
  • 認知症のリスクが高まってきていると感じている

まとめ:制度の「役割分担」を理解する

代理人登録制度は「元気な本人を日常的にサポートする制度」です。「認知症後も継続して財産を管理する制度」ではありません。この違いを理解せずに「登録してあるから安心」と思っていると、介護費用が必要なまさにそのタイミングで動けなくなるリスクがあります。

認知症の診断が出てからでは、家族信託も任意後見契約も、もう設定することができません。その段階で専門家に相談を受けても、提示できる選択肢は成年後見制度(裁判所の管理下に置かれる、制約の多い制度)に限られてしまいます。

「そのうち考えよう」が、一番危ない選択です。

「うちは代理人登録で足りるのか」不安な方へ

当事務所では、預貯金だけでなく、不動産・証券口座・将来の売却可能性まで含めて、家族信託・任意後見・代理人登録の使い分けをご案内しています。

  • 家族信託が必要かどうか判断できない
  • まず何から始めればいいか整理したい
  • 親の認知症対策を財産全体で考えたい

間に合ううちに、一度現状をご確認ください。

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