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[相続発生後の手続き]

【要注意】「不動産を相続すれば家賃も全部もらえる」という勘違いに注意

  • 投稿:2026年04月24日

賃貸不動産を相続した場合、「不動産を取得した人が家賃もすべて取得できる」と考えてしまうケースがありますが、これは誤解です。相続開始から遺産分割までの間に発生した賃料債権は、遺産とは別個の財産として、各相続人が法定相続分に応じて取得するものとされています。本記事では、賃料の法的な扱いと、実務で起こりやすいトラブル、注意点について解説します。

賃貸マンションやアパートなどの収益不動産を相続した場合、多くの方が見落としやすいポイントがあります。

それは、相続開始後に発生した賃料の扱いです。

「最終的に自分が不動産を相続するのだから、親が亡くなった後の家賃も当然に自分のものになる」

このように考えてしまう方もいます。

しかし、この考え方は注意が必要です。

結論から言うと、賃貸不動産を相続した人が、遺産分割前に発生した賃料まで当然に取得できるわけではありません。


不動産と賃料は別の財産として扱われます

相続が発生すると、遺産分割協議が成立するまでの間、不動産は共同相続人の共有状態になります。

一方で、賃料の扱いはこれとは別に考える必要があります。

賃料債権は、不動産そのものではなく、賃借人に対して賃料の支払いを請求できる金銭債権です。
預貯金そのものではありませんが、「お金を請求できる権利」という意味で、相続財産の中でも金銭に関する権利に分類されます。

そしてこの賃料債権については、最高裁平成17年9月8日判決において、

相続開始から遺産分割までの間に生じた賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する

と判断されています。

つまり、賃料債権は可分債権であり、相続開始と同時に、各共同相続人が法定相続分に応じて取得する性質を持っています。


不動産を取得した人が家賃を総取りできるわけではありません

例えば、次のようなケースを考えてみます。

・1月:被相続人が死亡
・相続人:長男A、長女B
・4月:遺産分割協議により長男Aがアパートを取得

この場合、4月以降の賃料は長男Aに帰属します。

一方で、1月から3月までに発生した賃料は、当然に長男Aだけのものにはなりません。

この期間の賃料債権は、各相続人が法定相続分に応じて取得しているためです。

したがって、「最終的に自分が不動産を相続したのだから、その前の賃料もすべて自分のものだ」と考えてしまうと、後で他の相続人との間でトラブルになる可能性があります。


遺産分割の効力は賃料には当然には及びません

遺産分割は、原則として相続開始時にさかのぼって効力が生じます。

しかし、賃料債権については、この遡及効はそのまま及びません。

最高裁は、遺産分割前に発生した賃料債権については、各相続人が確定的に取得するものであり、その後の遺産分割の影響を受けないと判断しています。

つまり、不動産の帰属と、過去の賃料の帰属は別問題として整理する必要があります。


実務で揉める原因は「入金」と「権利のズレ」です

実務でよくあるのは、次のような状況です。

・賃料が特定の相続人の口座に振り込まれている
・被相続人の口座に入金され続けている
・不動産を取得予定の相続人が賃料を受領している

しかし、実際の入金先と、法律上の帰属は一致しているとは限りません。

賃料は「これから分けるもの」ではなく、すでに各相続人に帰属しているため、実際の受領状況とのズレを清算する必要があります。

この整理を怠ると、「誰がいくら受け取ったのか」「費用は誰が負担するのか」といった点で紛争が生じやすくなります。


「金融資産」という文言だけでは賃料はカバーできません

遺産分割協議書では、次のような文言が使われることがあります。

「被相続人の預貯金その他の金融資産は、相続人Aが取得するものとする。」

一見問題なさそうですが、この表現には注意が必要です。

実務上、「金融資産」とは通常、

・預貯金
・株式
・投資信託

などを想定しており、賃料債権のような不動産から派生する金銭債権まで含めているとは限りません。

また、不動産について

「本件不動産はAが取得する」

と定めていたとしても、それだけで賃料債権まで整理されたことにはなりません。

そのため、このような曖昧な文言のままでは、

「家賃も含まれているはずだ」
「それは別だ」

といった解釈の争いが生じる可能性があります。


賃料を放置するとどうなるか

賃料債権について何も定めていない場合、

👉 遺産分割前に発生した賃料は未精算のまま残る状態になります

この場合、他の相続人は次のような行動をとることが可能です。

・自己の相続分に応じた賃料の支払請求
・受領済み賃料についての返還請求(不当利得)
・場合によっては賃借人への直接請求

また、実務上は、

・突然の請求書や内容証明が届く
・過去分をまとめて請求される
・管理会社や入居者が混乱する

といったトラブルに発展するケースも少なくありません。


不動産を取得した側(A)はどう対応すべきか

このような状況になった場合、まずは冷静に整理することが重要です。

・いつからいつまでの賃料を受け取っているか
・いくら受領しているか
・固定資産税や修繕費などの支出

を明確にした上で、

👉 相続分に応じた精算を行う必要があります

ここで重要なのは、

👉 「分ける」のではなく「精算する」

という考え方です。

さらに、後から蒸し返されないように、精算内容や今後の帰属については書面で残しておくことが重要です。


賃料債権は明示的に定めることが重要です

このようなトラブルを防ぐためには、遺産分割協議の段階で賃料の扱いを明確にしておくことが最も重要です。

例えば、次のような整理が考えられます。

・遺産分割後の賃料は不動産取得者に帰属する
・遺産分割前の賃料の帰属または清算方法を定める
・既に受領した賃料の扱いを明確にする


条文例(実務で使いやすい形)

【特定の相続人にまとめる場合】

「被相続人死亡日から本協議成立日までに発生した賃料債権については、相続人Aが取得するものとし、他の相続人はこれを確認し、異議を述べない。」

【法定相続分で処理し精算する場合】

「被相続人死亡日から本協議成立日までに発生した賃料債権は、各相続人が法定相続分に応じて取得するものとし、既に受領済みの金銭については本協議において精算済みであることを相互に確認する。」


相続放棄を検討している場合は特に注意が必要です

相続放棄を検討している場合には、賃料の扱いに十分注意する必要があります。

賃料を受領したり使用したり、管理会社に振込先変更を指示するなどの行為は、相続財産の処分と評価される可能性があります。

その場合、単純承認と判断され、相続放棄ができなくなるリスクがあります。

相続放棄を検討している場合は、賃料の受領や管理への関与は避けるべきです。


管理会社・入居者への対応も慎重に行う必要があります

相続人の一部が、他の相続人の同意なく、賃料の振込先変更を行うケースがあります。

しかし、このような対応はトラブルの原因となります。

支払先が不明確になると、賃料の支払いが滞ったり、供託などの対応が必要になることもあります。


まとめ

賃貸不動産の相続では、不動産の名義変更だけでなく、賃料の扱いについても正確な理解が必要です。

特に重要なのは、遺産分割前に発生した賃料は、不動産を取得した相続人が当然に取得できるものではないという点です。

賃料、費用負担、敷金などを含めて整理しておかないと、後から相続人間でトラブルになる可能性があります。

賃貸不動産を含む相続では、名義変更だけでなく、賃料や費用の清算まで含めて、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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