司法書士
吉原有規
司法書士吉原合同事務所代表。
モットーは「納得できる相続を増やす」こと。相続専門の司法書士として、誰に相談したらよいかわからない悩みを丁寧にお聞きし、一緒にベストな解決策を考えることで、「納得の相続」を増やしていくことを目指している。
趣味は旅行とグルメ。自分の直感で選ぶと大体失敗することから、旅の前には情報を徹底的に調べ、実際に行った人の声や情報を参考にしながら評価が高いところを巡っている。
[相続発生後の手続き]
相続放棄をしても、財産がすぐに国のものになるわけではありません。放棄は親族へと連鎖し、場合によっては管理責任が残ることもあります。本記事では、相続放棄の流れと国庫帰属までの実務、予納金などの現実をわかりやすく解説します。
目次
「相続放棄をすれば、もう関係は終わりですよね?」
相続のご相談では、こうしたお声をよくいただきます。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
相続放棄をしても、財産がすぐに国のものになるわけではありません。
しかも、放棄の仕方や財産の内容によっては、次の親族に問題が移るだけでなく、放棄した人に一定の管理責任が残ることもあります。
特に、空き家や山林、農地、売りづらい土地がある相続では、
「放棄したから終わり」と考えるのは危険です。
この記事では、相続放棄が連鎖した場合に誰へ移っていくのか、最後に本当に国庫へ帰属するのか、そして実務でどんなトラブルが起きやすいのかを、わかりやすく解説します。
相続放棄をすると、その人は法律上、最初から相続人でなかったものとみなされます。
そのため、相続権は次の順位へ移っていきます。
相続人の順位は、一般に次のとおりです。
つまり、自分が放棄すれば終わりなのではなく、
それまで表に出ていなかった親族へ問題が移ることになります。
実務では、ここで親族間の感情的な対立が起きやすくなります。
法的には正しく放棄していても、親族から見れば「爆弾を回された」と受け取られることがあるためです。
そのため、放棄を検討する際は、次順位の相続人に影響が及ぶ可能性まで踏まえて考える必要があります。
ここは特に誤解の多いところです。
2023年の民法改正により、相続放棄をした人は、放棄の時にその財産を現に占有していた場合、次の管理者に引き渡すまで保存義務を負うことが明確になりました。法務省も、改正点として「現に占有している場合」に義務が残る形へ見直したことを説明しています。
ただ、「現に占有」と言われても、一般の方には分かりにくいと思います。
例えば、
このような場合は、占有していると評価される可能性があります。
つまり、相続放棄をしたからといって、
その日から急に「私は一切無関係です」と言い切れるとは限りません。
空き家を放置した結果、屋根や外壁が落ちて近隣に被害が出たり、雑草や倒木でトラブルになったりすれば、現実には大きな問題になります。
「放棄したから知らない」では済まないおそれがある、という点は強く意識しておくべきです。
相続人全員が相続放棄をすると、結果として相続する者がいない状態になります。
ただし、その時点で自動的に国庫へ入るわけではありません。
家庭裁判所の案内でも、相続人全員が放棄して相続する者がいなくなった場合を含め、相続人の存否が明らかでないときは、申立てにより相続財産清算人が選任されるとされています。清算人は債務の支払などの清算を行い、残った財産を国庫へ帰属させます。
つまり、流れとしては次のようになります。
ここで大切なのは、**「国が勝手に引き取りに来る制度ではない」**ということです。
誰かが動き、裁判所の手続に乗せなければ、整理は始まりません。
相続放棄をめぐる現場で、見落とされがちなのが費用です。
相続財産清算人の申立てでは、申立手数料や郵便費用のほか、官報公告料や、裁判所が定める予納金が必要になることがあります。 裁判所の案内でも、官報公告料とは別に、管理費用や報酬の担保として予納金の納付が必要で、事案に応じて額が決まるとされています。札幌家裁では原則100万円、名古屋家裁では70万円程度を例示しており、少額で済むとは限りません。
ここで問題になるのが、そのお金を誰が出すのかです。
財産に十分な現金がなく、
といったケースでは、申立てをしたくても、費用負担が重くて進まないことがあります。
その結果、
「全員放棄したのに、整理の手続きが動かない」
「空き家だけが残り、誰も前に進めない」
という事態が実際に起こります。
「最後は国が引き取ってくれるなら安心」と思われがちですが、現実はそこまで単純ではありません。
相続人不存在の場面では、上記のような清算手続を経て残余財産が国庫帰属します。
一方で、土地を所有している相続人本人が土地を手放したい場合には、別途相続土地国庫帰属制度がありますが、こちらも無条件ではありません。法務省は、境界が争われている土地など、引き取れない土地の要件を明示しています。制度の趣旨としても、管理コストの国への転嫁やモラルハザードを避けるため、一定の要件を設けて審査するとされています。
つまり、相続に関する「国庫帰属」は、
放棄したら自動で国へ行くものでも、
困った土地を簡単に国へ渡せるものでもありません。
特に境界が不明確な土地や、管理状態の悪い土地は、処理のハードルが上がりやすくなります。
千葉県内でも、山林や農地、昔からの実家周辺の土地では、境界や管理状況があいまいなままになっているケースが少なくありません。そうした土地は、放棄や国庫帰属を考える前に、現地や権利関係の整理が必要になることがあります。
相続放棄は、借金が多い場合などには非常に有効な手段です。
しかし、次のような場合は「とりあえず放棄」で進めると危険です。
こうした案件では、放棄そのものの是非だけでなく、
放棄後に誰が何を抱えるのかまで見通しておく必要があります。
相続放棄は、借金から逃れるための万能策ではありません。
場合によっては、出口の見えにくい問題を別の形で残す手続きになることもあります。
相続放棄の相談は、単に家庭裁判所へ申述するだけで終わらないことが多くあります。
例えば、
こうした点は、登記だけ、裁判所手続だけ、測量だけでは見えないことがあります。
当事務所では、司法書士・土地家屋調査士・行政書士の視点から、
相続・不動産・境界・現地状況まで含めて、出口戦略を一緒に考えることができます。
相続放棄をするべきかどうか迷っている段階でも、早めにご相談いただくことで、余計な費用やトラブルを避けられる可能性があります。
相続放棄が連鎖すると、相続人は次の順位へ移っていきます。
そして、全員が放棄したとしても、財産がそのまま自動的に国のものになるわけではありません。
相続放棄は大切な制度ですが、
「放棄すれば全部終わる」と考えてしまうと危険です。
借金、不動産、空き家、農地、山林、未登記建物。
こうした要素が一つでもあるなら、放棄の前に一度、全体像を整理することをおすすめします。
このようなお悩みがある方は、吉原合同事務所までご相談ください。
法的な手続だけでなく、不動産の現場まで見据えてご案内いたします。
ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問合せください。
専門スタッフが丁寧に対応いたします。
対応地域
千葉市を中心とした千葉県全域